夜中にノックの音がして、開けたらハヤトが立っていた。
「入ってもいいか?」
いつもは居丈高なガキが今日に限って妙に殊勝な態度なので、どうかしたのかと考えていたら言い訳する様にまたハヤトは口を開く。
「ニーナは、今日はいないんだ。家に帰ってる。」
ニーナというのはハヤト付きのメイドだ。子供がいるとは思えないほど若くていい女で、俺も仲良くさせてもらっている。ハヤトほどじゃあないが。
そういえばそろそろ息子の誕生日だと言っていた。
「……かあさまは、あたまがいたいからだめだって。」
俯くと、綺麗に切りそろえられた髪が揺れて微かに音を立てた。丸っこい手でぎゅうと開きかけのドアを掴む。それから、ぱっと思い出した様に顔を上げた。
「お前は、行かなくていいぞ。薬が要るほどじゃないって。本当に、行かなくていいからな。かあさまはとうさまのなんだから、お前が入る隙なんて無いんだからな。」
「へーへー。分かった、行きませんよ。」
いくら俺でも、雇い主の本妻にまで手を出そうとは思わない。今のところ間に合っているし、正直、この家は遊びで手を出すには厄介だ。
その厄介の申し子は、それを知ってか知らずか、また俯いて口の端を噛んで、ぽつりと呟いた。
「なあ、入ってもいいか? シャマル。」
この家は広く入り組んでいるので、俺がこのドアを閉ざしても、この子供は自分の部屋に帰らずそっと屋敷中のドアを(寝静まって誰も開けてはくれないドアを)ノックして回るのだろう。一晩そうしてすごせる程度には、この屋敷は広く入り組んでいる。
「……おねしょすんなよ、隼人坊ちゃま。」
「なっ、しねーよ、バーカ!」
続きは落書きお絵描き。
「入ってもいいか?」
いつもは居丈高なガキが今日に限って妙に殊勝な態度なので、どうかしたのかと考えていたら言い訳する様にまたハヤトは口を開く。
「ニーナは、今日はいないんだ。家に帰ってる。」
ニーナというのはハヤト付きのメイドだ。子供がいるとは思えないほど若くていい女で、俺も仲良くさせてもらっている。ハヤトほどじゃあないが。
そういえばそろそろ息子の誕生日だと言っていた。
「……かあさまは、あたまがいたいからだめだって。」
俯くと、綺麗に切りそろえられた髪が揺れて微かに音を立てた。丸っこい手でぎゅうと開きかけのドアを掴む。それから、ぱっと思い出した様に顔を上げた。
「お前は、行かなくていいぞ。薬が要るほどじゃないって。本当に、行かなくていいからな。かあさまはとうさまのなんだから、お前が入る隙なんて無いんだからな。」
「へーへー。分かった、行きませんよ。」
いくら俺でも、雇い主の本妻にまで手を出そうとは思わない。今のところ間に合っているし、正直、この家は遊びで手を出すには厄介だ。
その厄介の申し子は、それを知ってか知らずか、また俯いて口の端を噛んで、ぽつりと呟いた。
「なあ、入ってもいいか? シャマル。」
この家は広く入り組んでいるので、俺がこのドアを閉ざしても、この子供は自分の部屋に帰らずそっと屋敷中のドアを(寝静まって誰も開けてはくれないドアを)ノックして回るのだろう。一晩そうしてすごせる程度には、この屋敷は広く入り組んでいる。
「……おねしょすんなよ、隼人坊ちゃま。」
「なっ、しねーよ、バーカ!」
続きは落書きお絵描き。