まだ彼らがお城にいた頃。
「近寄らないで頂戴。」
ビアンキは言い放った。
「嫌われたもんだなぁ。」
シャマルはうそぶいた。
「そうよ、大っ嫌いよ。私、あなたのことを憎んでいるわ。」
ビアンキは眉をひそめる。
「だってあなた、あの子に戦いかたを教えたじゃない。
たった一人を愛することを忘れさせたじゃない。」
許さないわ。
少女は男をを睨み付けた。
女って生き物はどうしてみんなこうなんだろう。
男はうんざりし、同時に感心していた。
生まれながらに、愛することを知っていて、しかもそれは間違っていないと確信しているのだ。疑いもしないのだ。
「じゃああいつが、戦い方も知らないで、
そのくせ真っ当な愛だけは知っていて、
そのせいでここを逃げ出すことすら思い付けないような、
そんな生き物のままだったら、
この先ここで生き抜いていけたと思うのかい?」
さあ、どうだい。小さなビアンキお嬢様。
「……私が守ったわ。」
彼女は呟いた。
「私があの子を守ったわ。私があの子を愛したわ。」
彼女は真っ直ぐに男を見上げて宣誓した。
「だから私は、あの子を探しに行くの。
付いてこないで頂戴。
私、あなたのことを憎んでいるのよ。」
そして彼女はくるりと身を翻した。ビロードのスカートが重たげに揺れた。
「あの子は私の弟なの。この世界で、この家で、たった一人の。」
そしてぱたぱたとまだ軽い足音を響かせて、幼い彼女は大理石のホールを駆け出していった。
「近寄らないで頂戴。」
ビアンキは言い放った。
「嫌われたもんだなぁ。」
シャマルはうそぶいた。
「そうよ、大っ嫌いよ。私、あなたのことを憎んでいるわ。」
ビアンキは眉をひそめる。
「だってあなた、あの子に戦いかたを教えたじゃない。
たった一人を愛することを忘れさせたじゃない。」
許さないわ。
少女は男をを睨み付けた。
女って生き物はどうしてみんなこうなんだろう。
男はうんざりし、同時に感心していた。
生まれながらに、愛することを知っていて、しかもそれは間違っていないと確信しているのだ。疑いもしないのだ。
「じゃああいつが、戦い方も知らないで、
そのくせ真っ当な愛だけは知っていて、
そのせいでここを逃げ出すことすら思い付けないような、
そんな生き物のままだったら、
この先ここで生き抜いていけたと思うのかい?」
さあ、どうだい。小さなビアンキお嬢様。
「……私が守ったわ。」
彼女は呟いた。
「私があの子を守ったわ。私があの子を愛したわ。」
彼女は真っ直ぐに男を見上げて宣誓した。
「だから私は、あの子を探しに行くの。
付いてこないで頂戴。
私、あなたのことを憎んでいるのよ。」
そして彼女はくるりと身を翻した。ビロードのスカートが重たげに揺れた。
「あの子は私の弟なの。この世界で、この家で、たった一人の。」
そしてぱたぱたとまだ軽い足音を響かせて、幼い彼女は大理石のホールを駆け出していった。
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