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<黒獄寺注意。>


逃げて来てしまった。
はしってはしって走って走って、逃げて来てしまった。
暗い路地で、彼がごろりと蹴り転がしたのは、人の頭だったように見えた。
暗い路地に黒い血溜まりに黒い頭部。
なんで彼だけ銀色なんだ。
そんなんじゃすぐに見つかっちゃうじゃないか。
見つけてしまったじゃないか。
彼が顔を上げた。
銜えた煙草の先から灰が落ちた。
これまた白かった。
白いものがキラキラ落ちて行く。
それだけみて、そこから焦点を逸らさないで、彼の目は見ないで、くるりと急ターンしてオレは走って逃げた。
彼はどんな目をしていた?
誇らしげだった?
『………っ!!』
いつもみたいに笑って呼ばれたら死刑宣告だ。
だから逃げた。走って逃げた。
もしかしておれは、なにもしらなかったんじゃないか?
ちがうものをみていたんじゃないか?
かれがおれのうえにかさねていたなまえは、
もしかしてそういうものなんじゃないか?
オレは、彼は友達だと思っていた。
彼は仲間だと思っていた。
いつでも守ろうとしていてくれたから、
勝手にオレは、彼はいいマフィアなんだと思っていた。
正義の味方みたいに。




見られてしまったな、と、思う。
しくじったな、とも思うけど、いつか来ることだから、
後悔はしていない。
そうだ。していない。ちょっと残念だとは、思っているけれど。
中学生ごっこを始めるときに、腹に決めていたから後悔なんてしていない。

ねえ、10代目。
この世にいいマフィアなんていないんです。
いるのは、ちったあマシな仕事をしているマフィアと、
こんなどーしよーもねー仕事をしているマフィアと、
そんだけ。
でも、

「でもオレは、あんたを世界一マシなマフィアにしてみせる。
 ねぇ、10代目。」











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