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<山本練習中。これは没パターン。山本が自分から雲雀に心情を吐露するとは思えないので。>



でもやっぱ、一番は野球だよな、と山本は思う。
親父から剣道を習った。スクアーロと戦った。死んでしまったと、オレが殺したんだと思った。結果的には、生きていたけれど。
自分自身も体中幾筋も斬られてたくさん血を流して、流させて、片目の視界を失って、大量出血による貧血と後悔でふらつく頭で、遊びじゃないって言うのはこういうことかと認識した。
なにを手にしようとしても距離感が掴めなくて手に力が入らなくてそれはすとんと山本の手から滑り落ちてしまったし、晴れた空も白い雲も、よくランニングにいく川縁の草むらも、すべてグレイにくすんで見えた。すべてが灰色で、それが突然暗転して真っ暗の中に赤い雨がぼたりと落ちて来て、足下で撥ねて小さな紅い王冠を作る。雫が撥ねて、土色に汚れた、元は白かったシューズに赤い点を残した。
あ、と思って空を見る。
雨なんて降っていない。赤い血なんて降っては来ない。貧血と眼帯のおかげでくすんで見えるだけで、変わらぬ青空が広がっている。
これが剣の世界か、と、山本は納得した。
それで親父はオレが野球をするのをあんなに喜んだのか。

グレイの空は長くは続かなかった。
スクアーロは生きていたし、眼帯は3日で取れた。
空の色は青に戻って、磨き抜かれた投球練習用のボールは真っ白で、つまり元通りの世界だ。
バットもボールも元通り手に馴染んで、数週間手を放していたなんて、ほんの数日掴むことも出来ない時間があったなんて嘘のようだった。

やっぱ一番は野球だよな、と、山本は思う。
これは疑いようがない。
一番は野球だ、でも。
参ったよなーと山本は頭を掻く。
たくさん、二番が出来てしまった。今までは、一番以外なんにもなかったのに、今は、一番ごしにいろんなものが見える。
たとえば、バッティングセンターで140kmの球を前にする。バットを構えてヒットを打つ、はずなのに、一直線に飛んでくる白球は斬撃に見える。打ち返すというよりは、切り捨てたいと思う。金属バットの甲高い音と、それからグリーンのネットに弾き返されたボールが飛び込む音、ホームランおめでとうの安っぽいメロディ。
なんか、ちがうよなあ。と、山本は思う。
目が慣れたのかと思って150kmの台の前に立ってみた。
確かに時速10km分ボールは速かったけれど、やっぱり何かが違った。

「つーわけでヒバリ、相手して。」











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