別れ話一歩手前。
caution山本さんが生まれつき男の人好き。
山本の手が、オレの肩に触れる。
そこからシャツを撫でて、遠慮もなく首元へ。
「待てってんだよ。オイ、さわんなっ!」
思い切り腕を振り上げたら山本はさすがに驚いた顔をして離れた。
離れて、もうしませんとばかり両手を上げて、一度瞬きした。そして、へらっと笑った。
いつもの、全部解ってるようなあの笑顔だ。
「獄寺、好きなヤツできた?」
(だからなんで、
こいつはいっつも人の心を見透かしたように、へらへら笑いながらオレのなかに入ってくんだよ)
獄寺は、腕を振り上げた勢いそのまま、壁際にへたり込んだ。
しゃがみ込んだまま睨み付ける。
ああ、図星だ。
山本は確信する。
(わっかりやすいやつ。
あーあ、これはもうおしまいかな、オレ達。)
溜息はつかなかった。落胆さえしていなかった。
(結構続いた、よなぁ。始めたときは、すぐフラれると思ってたんだけど。)
最初っから、獄寺の目は山本には向いていなかったので、
真っすぐたった一人しか見ていなかったので、
それに気付いていないのは当の獄寺だけだったので、
気付くまでだ、と覚悟はしていたのだ。
(で、永遠に気付かなかったら、
それかうっかりこっちに視線をくれたら、
ラッキーだなーって。
いやー、ほんと馬鹿だよな獄寺って。
結局何年かかったんだ?)
息を落ち着けた獄寺がたちあがる。
ぐしゃぐしゃになったシャツを叩いて乱暴にシワを延ばす。胸元ははだけたまま。
これも見納めかな。
「……なにへらへら笑ってんだよ。泣くかキレるかするトコなんじゃねーの?」
「なんで?」
「なんでって、フツーそうだろ!」
「オレ、フツーじゃねーもん」
(ああ、こいつは……!!)
獄寺はまたいつもの言葉を繰り返す。
ただし今は、本当に声を出して。
「なんっでいっつもそうなんだよ。
全部わかってる風な悟ってるような顔しやがって!」
「……たぶん、本当にそうだからじゃね?」
けろっと返されて、頭に上った血が行き場を無くす。獄寺がどうにか二の句を次ぐ前に、山本は笑顔をひっこめて淡々と話し出す。
「ほらオレ、身体でかいじゃん。あれ来るのも早かったのな。そりゃ小五で思い知らされて、延々5年も考えてりゃ、悟りの一つも開けんじゃねーの?」
そういって、また笑って、山本は獄寺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「ま、とりあえずおめでと。長かったな。と、あと、がんばれよ。じゃ、また明日ガッコーで。」
ひらひら手を振って去っていこうとする。
(ああ、本当にこいつは……)
獄寺は繰り返す。
(わかった顔して踏み込んで、しかも全然わかってねぇ。
バーーーカ!)
「待てよ!」
肩を引っつかんで引き止めて、半回転させる。そのまま山本の身体を壁に押し付けた。
驚いた顔をしている。
(バーカ)
もう一度繰り返して、口づけた。
てめーごときに悟りが開けんなら、
8つでハハオヤがハハオヤじゃなくてアイジンがハハオヤでしかもとっくにチチオヤに殺されてましたって知ったガキは、今頃神様にでもなってんじゃねーの?
生憎だったな!
「ご、くで、ら……?」
「オレはちょっと待てって言っただけで、やらねぇとは言ってねぇ。」
山本はまだぽかんとしている。
永遠にわからなくて結構だ。
オレは、こんなことするためのココロなんて信じない。
「…………オレがてめーのことなんか好きじゃないって知ってて、今までさんざんやってたのはどこのどいつだよ。」
硬い手の平が髪を撫で肩に触れ、ベルトにかかった。
あーあ、わっかりやすいやつ。
どいつもこいつも、バカばっかりだ。
そして、獄寺はゆっくり目を閉じた。
caution山本さんが生まれつき男の人好き。
山本の手が、オレの肩に触れる。
そこからシャツを撫でて、遠慮もなく首元へ。
「待てってんだよ。オイ、さわんなっ!」
思い切り腕を振り上げたら山本はさすがに驚いた顔をして離れた。
離れて、もうしませんとばかり両手を上げて、一度瞬きした。そして、へらっと笑った。
いつもの、全部解ってるようなあの笑顔だ。
「獄寺、好きなヤツできた?」
(だからなんで、
こいつはいっつも人の心を見透かしたように、へらへら笑いながらオレのなかに入ってくんだよ)
獄寺は、腕を振り上げた勢いそのまま、壁際にへたり込んだ。
しゃがみ込んだまま睨み付ける。
ああ、図星だ。
山本は確信する。
(わっかりやすいやつ。
あーあ、これはもうおしまいかな、オレ達。)
溜息はつかなかった。落胆さえしていなかった。
(結構続いた、よなぁ。始めたときは、すぐフラれると思ってたんだけど。)
最初っから、獄寺の目は山本には向いていなかったので、
真っすぐたった一人しか見ていなかったので、
それに気付いていないのは当の獄寺だけだったので、
気付くまでだ、と覚悟はしていたのだ。
(で、永遠に気付かなかったら、
それかうっかりこっちに視線をくれたら、
ラッキーだなーって。
いやー、ほんと馬鹿だよな獄寺って。
結局何年かかったんだ?)
息を落ち着けた獄寺がたちあがる。
ぐしゃぐしゃになったシャツを叩いて乱暴にシワを延ばす。胸元ははだけたまま。
これも見納めかな。
「……なにへらへら笑ってんだよ。泣くかキレるかするトコなんじゃねーの?」
「なんで?」
「なんでって、フツーそうだろ!」
「オレ、フツーじゃねーもん」
(ああ、こいつは……!!)
獄寺はまたいつもの言葉を繰り返す。
ただし今は、本当に声を出して。
「なんっでいっつもそうなんだよ。
全部わかってる風な悟ってるような顔しやがって!」
「……たぶん、本当にそうだからじゃね?」
けろっと返されて、頭に上った血が行き場を無くす。獄寺がどうにか二の句を次ぐ前に、山本は笑顔をひっこめて淡々と話し出す。
「ほらオレ、身体でかいじゃん。あれ来るのも早かったのな。そりゃ小五で思い知らされて、延々5年も考えてりゃ、悟りの一つも開けんじゃねーの?」
そういって、また笑って、山本は獄寺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「ま、とりあえずおめでと。長かったな。と、あと、がんばれよ。じゃ、また明日ガッコーで。」
ひらひら手を振って去っていこうとする。
(ああ、本当にこいつは……)
獄寺は繰り返す。
(わかった顔して踏み込んで、しかも全然わかってねぇ。
バーーーカ!)
「待てよ!」
肩を引っつかんで引き止めて、半回転させる。そのまま山本の身体を壁に押し付けた。
驚いた顔をしている。
(バーカ)
もう一度繰り返して、口づけた。
てめーごときに悟りが開けんなら、
8つでハハオヤがハハオヤじゃなくてアイジンがハハオヤでしかもとっくにチチオヤに殺されてましたって知ったガキは、今頃神様にでもなってんじゃねーの?
生憎だったな!
「ご、くで、ら……?」
「オレはちょっと待てって言っただけで、やらねぇとは言ってねぇ。」
山本はまだぽかんとしている。
永遠にわからなくて結構だ。
オレは、こんなことするためのココロなんて信じない。
「…………オレがてめーのことなんか好きじゃないって知ってて、今までさんざんやってたのはどこのどいつだよ。」
硬い手の平が髪を撫で肩に触れ、ベルトにかかった。
あーあ、わっかりやすいやつ。
どいつもこいつも、バカばっかりだ。
そして、獄寺はゆっくり目を閉じた。
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