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08在庫整理第三弾。

完成しているけど自己没にしてたもの。

不健康注意。





>PLAY


いたいよ。

突如謎の暗黒巨大組織のボスになって数年。
気がついたら降り掛かってくる火の粉も、
それを払いのける事も当たり前のことになっていた。
もういっそ、月に一度の大掃除?
で、当然のように自称右腕さんも手伝うと言い張ってついてくるので、
(正確には、『オレの仕事です!』と言い張るので、)
なので、
今日は二人で、人気のない森の木陰でピクニックです。
ちょっと辺り一面焼けこげてるけど。
サンドイッチの入ったバスケット、じゃあなくて、
止血帯が入った処置キットなんだけど。
だけど、
二人っきりでぼーっと出来るのなんてこんな時ぐらいなので、
ああ、もしかしたらオレ、結構楽しみにしているのかもしれない。
月に一度の大掃除デート、中ボス付き。

「……あ、獄寺君、」
「はい?」

彼がこっちを向く。
作戦は無事終了して、オレたちは小さな山火事の鎮火を待っている。
ぱちぱち爆ぜる若木を見ながら
肩をくっつけて二人で並んで
足を投げ出してぼんやり座っていた。だから
お互い見合うとおでことおでこもくっつきそうだ。

「ここ、血。」

頬に手を伸ばして、
親指でこすったら茶色の破片がぱらぱらと落ちた。

「ああ、きっと擦り傷っスね。色々ぶつかったんで。」
「うん。もう乾いてる。」

白い肌の上に鬱血のあか。
その中心に、細い細い真っ赤なラインが一筋。
オレたちは返り血を浴びるようなことはしないから、
血が付いていたらそれはオレの血か彼の血で、
オレには滅多に血の飛び散るような傷は出来ないから、
(だって獄寺君がガード張るから)
だから彼に血が付いていたらそれは彼の血で、

だけど、彼の傷はオレの傷だ。

オレのせいだからオレの傷だ。
オレの傷なのに、それが彼の身体についているのは変だと思う。
オレの傷なのに獄寺君が痛いのはおかしいと思う。
絶対どっか間違ってると思う。

でも、


そんなこといったら、あいつらだっていたいんだ。


でもあいつらはべつだ。
あいつらが先に手を出したんだから、
あいつらはべつだ。
あいつらがいたいのはべつ。
そう考えろってリボーンが言ってた。
リボーンが言ってたから今はそう考える。
今はそうしろって言ってたから、いまはそうする。

そーいえば小学校の算数の分数の割り算、
どうしてこうするのって聞いたら
いいからいまはひっくり返してかけ算しなさいって言われたけど、
大きくなったらわかるって言われたけど、
今でもわかんないや。
(獄寺君知ってるかな。頭いいし。)


でも、正当な理屈があるのだとしても、
それが頭悪いオレにはわからないだけだとしても、

オレの傷が、獄寺君についてるのはおかしいと思う。



「痛い?」

親指で擦って、聞いてみた。

「……ちょっと、ヒリヒリします。」

獄寺君は……

大丈夫な時はちゃんと「痛い」というようになりました。
でもあいかわらず大丈夫じゃない時は大丈夫だと言うので、
あんまり意味がありません。
ていうか、

オレの傷なのに獄寺君が痛いんじゃ、
本当に全然意味ないんだってば。

おでこをくっつけてみた。傷口に指で触れたまま。
だめだ、やっぱりオレは全然痛くない。
もうちょっとくっつければ痛くなるかなぁ、と、
オレは今度は唇をくっつけてみようと思った。
おもった、ら、

「ぅわ! ちょ、10代目!?」

おもいっきり拒否られた。
肩からぐいっと突き放された。
腕一本、真っ直ぐ伸ばした距離の向こうに、
まっかになった獄寺君の顔。

「……ぶー……」

変な声出したのは、オレ。

なんでそこで赤くなりますか?
めいっぱい遠ざけますか?
ちょっとキスしようとしただけだぞ、オレ。

つーか巻き戻して言うけど、
おでこくっつけた時点でキミ
そーとー顔赤かったし脈拍上がったし緊張してたよね。息止めてたもんね。

オレたちついさっきまで背中合わせで戦ってませんでしたか?
君ってば容赦なくオレの二の腕掴んで地面に押し倒しませんでしたか?
何のためらいもなく腰に手回してオレを引き寄せませんでしたか?
耳元でひそひそ作戦打ち合わせたりしてませんでしたか?
そこんとこどうなんですか?
ああ、オレ、この世の不条理に文法もめちゃくちゃだ。

だって獄寺君おかしくないか?
あの時ちょっとドキドキしてたのはオレだけか?
んで、君は今更ちょっと顔寄せただけでその反応?

「……ぶー……」
「だ、だって、ですね、」

変なうなり声だけで、必死に弁解を始めようとしてくれるのは
それはこのやり取りさえお馴染みのものだから。
だから、彼の頭脳を以てしても
今日もやっぱりオレが納得できるような
斬新で画期的な説明が出てくるはずもなく

「……ほんと、勘弁してください。10代目……」

何回か口を開け閉めしたあとで、彼の口から出てきたのはその一言だった。
言葉では拒絶しながら、彼は突っ張った腕から力を抜く。
オレは彼を地面に横たえる。
ああ、震えてる。
爆発炎上のど真ん中で、膨れ上がる熱風に煽られて、
あんなに平然としてたのに、揺るぎなかったのに、今更オレの身体の下で、
体中爆発寸前の心臓になったみたいに震えてる。
オレはつい笑ってしまう。
獄寺君は思いっきり困った顔で、
(こんな顔はこんな時しか見せてくれない)
オレに抗議する。

「あの、10代目、今日はここ、外なんスけど……」
「うん。こーゆーのを日本語ではアオカンと言う。」
「……知ってます。」
「獄寺君物知りだねぇ。」

一度口づけて、
(少し鉄の味がした)
ほんのちょっと身体を浮かしてベルトに手をかける。
獄寺君は、万が一に備えて
手首のブレスを外す。
内側にぎっしり小型のダイナマイトが詰まってる。
裸になった手首を掴む。
ああ、ここだけはいっつも傷一つない、日焼けさえした事がない、
獄寺君の本当の部分。
どきんどきんと脈打っている。
そこを掴んで、
バンザイの姿勢で押さえ込んで、囁く。

「最後までは、しないから。」

がああああっと赤くなった顔で、もぞもぞと獄寺君がいう。

「か、帰らないと、リボーンさんに死んだと思われますよ?」
「オレ、もうそこまでダメツナだと思われちゃないと思うんだけど。」
「つか、そろそろ処理班が……」
「だから適当にやめてあげるってば。」
「服、汚れたらどーすんスか?」
「燃しちゃえば? 経費で落ちるよ?」
「ついでに、オレの査定も下がります。急所に一撃って、」
「あはは。口添えしてあげるから、そんときは通訳お願い。」

笑いながらまた頬の傷口をぐいって擦ったら、
彼はちょっと眉根を寄せる。
オレが、
痛くなれたらいいのに。
でもそんなのは無理なんだ。
無理だからせめて、オレが直接痛くしてあげるよ。
グッチャグチャにして、わけわかんなくしてあげる。
君は、アイツらとは違うから、
オレのせいで君に傷がついて、
君だけ痛いなんて納得できない。
オレは無傷で痛くないなんておかしいよ。
耐えらんないよ。
オレが直接痛くしてあげる。
君を傷つけて、ぐちゃぐちゃにして、
オレが、君を、傷つけて、
ぐちゃぐちゃにしてやる。ボロボロのどろどろにしてやる。
君は、アイツらとは違うから。
君はアイツらとは違うからオレの大事な人だから
ぐちゃぐちゃにしてどろどろのボロッボロにして
思いっきり痛めつけて泣かせて、
オレが。

オレにやらせてよ。オレのせいにしてよ。オレに傷つけさせて。

シャツの裾から手を忍び込ませたら、彼の身体がびくんと跳ねた。
この身体は鼓動している。生きてる。
それを、お願い、確かめさせて。

オレのために君は痛みを恐れない。
だから、オレは君を傷つける。
そして、君はそれさえ痛みとは呼ばないだろう。

ねえ獄寺君、オレには、それが痛いんだよ。
分け合えて減らせればいいのに、なんで、こんなに膨れ上がっちゃうのかな。
ねえ、いつまでオレを、飲み干してくれるの?






|| STOP









言い訳反転>
あまりにポエムなんでどうにかしようと思ったまま、どうにもならない。のでお蔵に入れてました。

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