08在庫整理第五弾。
完成済み。
>PLAY
ずっと見ていた。
その人は、自分が知る限り一番最初は、同じクラスの女子が好きだった。
中学三年間はその女子のことが好きで、卒業して縁遠くなって、高校に入って別な女子をかわいいと言っていた。
けれどその女ではなく更に別な女が告白というものをしてきた。どう思うと聞かれて悪くないんじゃないですかと答えた。少なくとも10代目を好きになるという時点で他の女より見る目がある。
そうなんだよねえと10代目は答えて、翌日から二人は『友達』になり、ひと月ほどで『恋人』になり、半年後に別れた。『元・恋人』になった女曰く、沢田君は誰にでも優しすぎる、のだそうだ。
月に一度ほど浮気を疑われ、10代目は根気強く女のヒステリックな訴えに耳を傾けていたけれど、やがて女の方が関係の打ち切りを申し出た。(10代目がそんな不実なことをするはずないだろうに、見る目のない女だ。)
その女が別な男を作った頃、10代目にもまた告白というのをしてくる女が現れて、今度は友達を経由しないで恋人になった。確か3ヶ月ぐらい恋人だったはずだ。
三ヶ月目のある日、今度ははっきりと、女の方が別な男を作ってそれを理由に別れを切り出した。実は10代目の方もその3ヶ月のうちに別な女から告白されていて、付き合ってる人がいるから、という理由で断っていた。
別れたという噂が広まったところでその女が再度浮上して、恋人の座を勝ち取った。(ちなみにこの辺の話が入り乱れているのはこの3ヶ月間にクリスマスと冬休みとバレンタインが含まれるからだ。)その女とは次のバレンタイン辺りまで続いて……、ああ、振り返るのが段々めんどくさくなってきた。以下略だ。
ともかく、いつの間にか10代目は頻繁に思いを打ち明けられる様になり、10代目は余裕があればそれを受け入れたし、他の女で埋まっていれば丁重に断った。告白された、付き合うことにする。そう言われる回数が増えて、どうしようかと聞かれる回数はほぼ0になった。
イタリアに来て3年になる。
この前、10代目は管理部の女に優し過ぎて不安になると言われ、お別れしたばかりだ。今なら、だれが愛を告げても求めても、彼は与えるだろう。穏やかな微笑みを持って応えるだろう。
医療科の才媛が、オペラを観に行く相手を探していて、オペラは今夜で、今夜10代目はご予定がない。
チケット2枚を、書類の捌けたデスクの上に置いた。
「ねえ獄寺君それ……断れないかな?」
「……は?」
初めて聞く言葉だったので耳を疑う。
「だめ?」
「いえ、構いませんけど、あの……」
「あ、オレが独自に彼女について何か握ってる訳じゃないよ。何か裏があるとかじゃないから。うん。獄寺君が黙って見逃すくらいなんだから、魅力的な女性なんだろうと思うよ。断るのは、オレの個人的な都合。」
そこで10代目は短く言葉を切った。
「なんだかずっとさ、オレなんかのこと好きだっていってくれるから、オレもその人のこと好きになれば喜んでもらえるかと思ってたんだけど、どうも逆みたいでさ。なんか、逆に不幸を振りまいてる気がしてきた。だから、もうやめることにする。」
だからごめん、その人を傷つけない様に、上手く断っておいてくれないかな?
申し訳なさそうに、10代目は仰った。
オレは、10代目のご命令ならばもちろん、どんなことでも完璧遂行してみせるけれど。
『好きだっていってくれるから、オレもその人のこと好きになれば喜んでもらえるかと思ってたんだけど』
(じゃあオレが、今まで一度でも好きだって言っておけば?)
(おれがそうだったかもしれないのに?)
『なんか、逆に不幸を振りまいてる気がしてきた。』
(オレはそんなこと思わないのに。)
(ああ、なんて見る目のない奴ら。)
『だから、もうやめることにする。』
(だけどもう、後悔したって遅いのだ。)
ああ、今日はオレ、上手く取り繕えないかもしれない。
「ところでさ、獄寺君今夜ヒマ? どこか食事に行かない?」
このひとはなんて、優しくて残酷。
|| STOP
言い訳反転>
大人ツナはモテるのではないか説を検証してみた。
書いてる途中で、それじゃツナ獄にならないじゃん(当たり前)に気付いて放置してた。
ざっくり書き上げて公開。
完成済み。
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ずっと見ていた。
その人は、自分が知る限り一番最初は、同じクラスの女子が好きだった。
中学三年間はその女子のことが好きで、卒業して縁遠くなって、高校に入って別な女子をかわいいと言っていた。
けれどその女ではなく更に別な女が告白というものをしてきた。どう思うと聞かれて悪くないんじゃないですかと答えた。少なくとも10代目を好きになるという時点で他の女より見る目がある。
そうなんだよねえと10代目は答えて、翌日から二人は『友達』になり、ひと月ほどで『恋人』になり、半年後に別れた。『元・恋人』になった女曰く、沢田君は誰にでも優しすぎる、のだそうだ。
月に一度ほど浮気を疑われ、10代目は根気強く女のヒステリックな訴えに耳を傾けていたけれど、やがて女の方が関係の打ち切りを申し出た。(10代目がそんな不実なことをするはずないだろうに、見る目のない女だ。)
その女が別な男を作った頃、10代目にもまた告白というのをしてくる女が現れて、今度は友達を経由しないで恋人になった。確か3ヶ月ぐらい恋人だったはずだ。
三ヶ月目のある日、今度ははっきりと、女の方が別な男を作ってそれを理由に別れを切り出した。実は10代目の方もその3ヶ月のうちに別な女から告白されていて、付き合ってる人がいるから、という理由で断っていた。
別れたという噂が広まったところでその女が再度浮上して、恋人の座を勝ち取った。(ちなみにこの辺の話が入り乱れているのはこの3ヶ月間にクリスマスと冬休みとバレンタインが含まれるからだ。)その女とは次のバレンタイン辺りまで続いて……、ああ、振り返るのが段々めんどくさくなってきた。以下略だ。
ともかく、いつの間にか10代目は頻繁に思いを打ち明けられる様になり、10代目は余裕があればそれを受け入れたし、他の女で埋まっていれば丁重に断った。告白された、付き合うことにする。そう言われる回数が増えて、どうしようかと聞かれる回数はほぼ0になった。
イタリアに来て3年になる。
この前、10代目は管理部の女に優し過ぎて不安になると言われ、お別れしたばかりだ。今なら、だれが愛を告げても求めても、彼は与えるだろう。穏やかな微笑みを持って応えるだろう。
医療科の才媛が、オペラを観に行く相手を探していて、オペラは今夜で、今夜10代目はご予定がない。
チケット2枚を、書類の捌けたデスクの上に置いた。
「ねえ獄寺君それ……断れないかな?」
「……は?」
初めて聞く言葉だったので耳を疑う。
「だめ?」
「いえ、構いませんけど、あの……」
「あ、オレが独自に彼女について何か握ってる訳じゃないよ。何か裏があるとかじゃないから。うん。獄寺君が黙って見逃すくらいなんだから、魅力的な女性なんだろうと思うよ。断るのは、オレの個人的な都合。」
そこで10代目は短く言葉を切った。
「なんだかずっとさ、オレなんかのこと好きだっていってくれるから、オレもその人のこと好きになれば喜んでもらえるかと思ってたんだけど、どうも逆みたいでさ。なんか、逆に不幸を振りまいてる気がしてきた。だから、もうやめることにする。」
だからごめん、その人を傷つけない様に、上手く断っておいてくれないかな?
申し訳なさそうに、10代目は仰った。
オレは、10代目のご命令ならばもちろん、どんなことでも完璧遂行してみせるけれど。
『好きだっていってくれるから、オレもその人のこと好きになれば喜んでもらえるかと思ってたんだけど』
(じゃあオレが、今まで一度でも好きだって言っておけば?)
(おれがそうだったかもしれないのに?)
『なんか、逆に不幸を振りまいてる気がしてきた。』
(オレはそんなこと思わないのに。)
(ああ、なんて見る目のない奴ら。)
『だから、もうやめることにする。』
(だけどもう、後悔したって遅いのだ。)
ああ、今日はオレ、上手く取り繕えないかもしれない。
「ところでさ、獄寺君今夜ヒマ? どこか食事に行かない?」
このひとはなんて、優しくて残酷。
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言い訳反転>
大人ツナはモテるのではないか説を検証してみた。
書いてる途中で、それじゃツナ獄にならないじゃん(当たり前)に気付いて放置してた。
ざっくり書き上げて公開。
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