08在庫整理第八弾。
完成しているけど自己没。
>PLAY
ケータイの音で飛び起きた。
雲雀だと思ったんだ。
連日の雨でここんとこグランドコンディションは最悪。
朝練はずっと中止状態、
放課後の手合わせもなし、
そんでついに、ロードワークも、今日はやる気なし。
だって雨なんだ。
だから起きる気がしなくて、目覚まし時計を無視し続けている。
5分おきに鳴るピーってアラームを布団の中から叩いて止めて、
(布団から出てメインスイッチ切るのも面倒くさい。)
オレはずるずるずるずる。
もう、6時45分だって。
考えられないような怠けっぷり。
なんだっけ? 一日の遅れを取り戻すのに、三日? かかるのに、なー……。
もっぺん枕に首を突っ込んだら、今度は、
後頭部にドリルで穴開ける気なんじゃねーのってくらい
容赦なく突き刺さる携帯電話の呼び出し音がした。
(え、コレ、もしかして、)
買ったばっかで使い方わかんなくって、
だから獄寺に「ともかくすぐ気がつきそうな音」って頼んだら、
本当にアタマが割れるようなスゴイ音を設定してくれた。
目覚ましからメールから、着信まで全部一緒。
だから。
「ヒバリッ!?」
寝ぼけたオレは布団を飛び出してバイブで暴れてるケータイを引っ掴んで、
『アラーム』
の文字に思いっきり凹んだ。
ケータイをデコに当てて座り込んでうなだれて、
ネクストサークルで祈ってる打者みたいだ。
オレに打順がつながりますように。
でももう残りワンナウトでツーストライクで、
オレの出番はほとんど絶望的。
それで神頼み状態。
一発逆転、フォアでもデッドでもいいから繋がりますようにって、
まさに神頼み状態。
そりゃ、勘違いして布団も飛び出すよ。
ああ、オレ本当バカだなあ。
どこをどーやったら、
朝7時ジャストに雲雀に呼び出されるなんて思うんだろう。
いや、そもそも、雲雀ってオレ番号知ってんのかな?
勝手に呼び出された事はあるけど、毎回番号違うし、
オレが教えられた連絡先は、なんと草壁さんに通じてたし。
(連絡用だからそれで十分でしょって、そりゃ、そーなんだけどさあ……)
あーあ、最悪。
……サイアク、の、30歩ぐらい手前。
(うん。まだそこまでひどくない。)
ともかく、
おかげですっかり目が覚めてしまったので、
今日も雨で朝練はないので、
ランニングに行く時間ももう残っていないので、
制服に着替えて朝飯喰ったらツナの家に行くことにした。
きっと獄寺はもう来てる。
ケータイの設定を変えて貰おう。
こんな目の覚め方は、
(だって、絶対ヒバリだと思ったんだ。)
こんな目覚め方は、あんまり、うれしくない。
(ヒバリだと思ったんだよなぁ……。)
「あー? てめ、朝っぱらからシケたツラしてんじゃねーよ。」
ぽつんぽつんと雨粒が落ちる透明なビニール傘の下で、
獄寺の朝の挨拶はそれだった。
さっきまでまだ開かない玄関を見てニコニコしていたくせに、
オレを見る肩越しの視線はもう睨んでる。
「はよ、獄寺。ナニ? オレ調子悪そう? 心配してくれんの?」
「すっかよ、バーカ!!」
まーまー。となだめてそれから
「なあ、ケータイの着信音、一人分だけ変えたいんだけど、どーやんの?」
聞いたら、
「まずあどれすちょうをぐるーぷでわけてふぉるだでしていして……」
訳が分からなかったので、やっぱりまたオレのケータイは獄寺の手に託された。
「つか、お前のケータイ、重くねぇ? いつの機種だよ。」
「さー? 安いのから選んだから。」
ったく。
文句言いながら獄寺は親指でポチポチと、
持ち主のオレですら見た事ない画面を開いていく。
「で、誰のをどんなにしたいんだよ。」
「えーっと……」
部員は着信あったときに名前見ればわかる。
ツナも獄寺もわかる。
んで、だれも早朝とか深夜とかそんな非常識な時間には掛けてこない。
放課後だけだ。
だから寝ぼけて勘違いもしない。
だから、
「……ヒバリ、からのが、目覚ましと違えば。」
獄寺は眉をひそめる。
「お前、アイツのアドレス知ってんの?」
オレは首を横に振る。
「勝手にかかってくんのな。
毎回番号違うし、あと、非通知、だっけ? それだったり。」
獄寺は、いつもの馬鹿にしたとかあきれたとかそう言うのではなく、
もういっそ哀れな生き物を見る目で、
(そうだ確か英語で、 I が私なら、僕やオレって何って聞いた時、
こんな顔してた)
そんな目でオレを見てため息吐いて、
「ムリ。」
と、オレの胸にケータイを押し返した。
「できっかもしんねぇけど、面倒くせぇ。自分で調べやがれ。」
「えー。だって獄寺、これ、このまんまじゃ心臓に悪ィよ。」
「うーるーせ。てめーなんざ、えーえんに着信待ってどきどきしてやがれ。」
『うっわ、山本クン、少女マンガみてー。きもちわりー。』
獄寺はそう言おうとして、ちょうどその途中で、
がちゃりと玄関の開く音がした。
ぐるんと獄寺が身体をねじる。回れ、右。背筋を伸ばして直立不動。
「おはようございます!! 10代目、の……、」
勢いよく飛び出した言葉は、フォークボールより見事に途中で落ちた。
玄関から現れたのは、
「……の、お母様……」
だったのだ。
「……っ、と、あの、おはよう、ございます……」
同一人物とは思えない気の抜けた声で獄寺は繰り返す。
「おはよう、獄寺君。山本君。
いつも待たせちゃってごめんなさいね。
ツナもそろそろご飯食べ終わるはずだから」
「いっ、いえそんなぜんぜんっ!」
獄寺はがばっと顔を上げて、
ツナのおふくろさんの手に大きなゴミ袋があるのを見つけて、
「あ! ゴミ出しですか? オレ、手伝います!」
なんて言い出す。
「あら、ありがと。でも、これだけだから……」
「あ、じゃあ! オレ、傘を……! 」
「ありがとう、でも、獄寺君濡れちゃうでしょう?」
「いえっ! ぜんっぜん構いません!!」
必死な獄寺のやり取りを見ながら、
ああ、確かにこれは、とオレは思う。
獄寺はゴミ袋と玄関と、ちらちらちらちら忙しなく目線を移動させて、
ああ、獄寺はずーっと着信待ちだ。
永遠にドキドキしながら着信待ちだ。
たしかにこれは、きもちわりー、かもなあ。
獄寺が押し問答しているうちにまた玄関が開いて、
今度こそツナが出てきた。
で、タイミング悪く、
「おはよう」の声より先にドアが獄寺の背中に激突して、
獄寺は振り返って思いっきり犯人を睨みつける。
睨みつけて、犯人の正体を知って、顔が真っ青になって、
でも真っ青になったままニヤけだすから、すげぇ顔。
上擦ってひっくり返った声で叫ぶ。
「おっ、おはようございます!! 10代目!」
「お……おはよ、獄寺君。」
ああ、たしかにこれは、『きもちわりー』かなあ。
でも、『少女マンガ』みたいかなあ?
これを少女漫画と言うなら、
まさかコレ、『恋』とかゆうのかなあ、なんて、オレは思ったりする。
獄寺と違って女兄弟が居ないのでわからない。
ツナが傘を開く。
傘もう一つ分距離を開けて、獄寺が後に続く。
雨の通学路を歩き出す。
(あ、ゴミ袋持ってる。)
「おはよ、山本。」
「おっす。ツナ。あ、なぁツナ、昨日のアレ視た?」
「あー、うん。視た視た!」
オレは特には『どきどき』しないので、
着信を待つまでもなく向こうからかかってきたので、
オレはツナとちっとも気持ち悪くない男子中学生らしい朝の挨拶をしたら、
やっぱり獄寺はぎりぎりーっと睨んでいた。
「あの、獄寺君。」
「はいっ! なんですか10代目!」
「いや、えと。あの。ゴミ捨て場、過ぎちゃったよ?」
「あ、すみません! すぐ戻ります!」
ああ、獄寺はやっぱちょっと『きもちわりー』や。
で、オレとツナの会話はちっとも気持ち悪くないから、
オレはツナが好きだけど、これはきっと恋じゃない。
つまり
オレに『きもちわりー』なんて言うなんて、
じゃあ獄寺は時々『きもちわりー』なんて思ってるんだ。
今朝のオレは、どうだったのかなあ。
獄寺に聞いてみてみようかと思ったけど、
これは聞かない事にした。
あーあ。
オレも『きもちわりー』のかな?
とりあえず、着信音はどーにかしねーと。
だってこのままじゃ、獄寺の言う通り『えーえんにどきどき』してしまう。
それは困る。
ああでも、着信音変えるのめんどくさいな。
このままでもいいかな。
今日夜更かしして取説とにらめっこしながらそんな事するよりは、
早く寝て明日早起きする方が、
ぬかるんだグラウンドで自主トレする方が、
雨の中ロードワークする方が、
そっちのほうがいい気がする。
いや、それは、オレが野球が好きだからじゃなくて。
なくて……なんだろう。
今日は雨が降ってる。
三人とも傘を広げて歩いてる。
お互いちょっと遠いから、今日は黙って歩いている。
獄寺はきっと今、ツナからの着信待ちで
『えーえんにどきどき』している。
『えーえんにどきどき』してるから、
あの傘の下では『きもちわりー』の雨が降って獄寺を濡らしてる。
オレの傘の下は、何が降っているんだろう。
冷たい空気は嫌いじゃないから、
やっぱり今日は早く寝て、
明日は雨でも傘をささずにロードワークに行こうと思った。
二度寝してる布団の中じゃなくて、息を弾ませてランニング中なら、
きっと『えーえんにどきどき』なんかせずに着信を待っていられる。
|| STOP
言い訳反転>
初めて書いた中学生の山本の一人称の山ヒバ。
山本が、あまりにもフリーダムに勝手に喋り続けるのでとても困った。
さすが山本。
この山本語は注釈入れなきゃわからないだろ、書き直そう。
と思ったまま、手のつけ用がなくてお蔵入り。
ほんと、さすが山本。
完成しているけど自己没。
>PLAY
ケータイの音で飛び起きた。
雲雀だと思ったんだ。
連日の雨でここんとこグランドコンディションは最悪。
朝練はずっと中止状態、
放課後の手合わせもなし、
そんでついに、ロードワークも、今日はやる気なし。
だって雨なんだ。
だから起きる気がしなくて、目覚まし時計を無視し続けている。
5分おきに鳴るピーってアラームを布団の中から叩いて止めて、
(布団から出てメインスイッチ切るのも面倒くさい。)
オレはずるずるずるずる。
もう、6時45分だって。
考えられないような怠けっぷり。
なんだっけ? 一日の遅れを取り戻すのに、三日? かかるのに、なー……。
もっぺん枕に首を突っ込んだら、今度は、
後頭部にドリルで穴開ける気なんじゃねーのってくらい
容赦なく突き刺さる携帯電話の呼び出し音がした。
(え、コレ、もしかして、)
買ったばっかで使い方わかんなくって、
だから獄寺に「ともかくすぐ気がつきそうな音」って頼んだら、
本当にアタマが割れるようなスゴイ音を設定してくれた。
目覚ましからメールから、着信まで全部一緒。
だから。
「ヒバリッ!?」
寝ぼけたオレは布団を飛び出してバイブで暴れてるケータイを引っ掴んで、
『アラーム』
の文字に思いっきり凹んだ。
ケータイをデコに当てて座り込んでうなだれて、
ネクストサークルで祈ってる打者みたいだ。
オレに打順がつながりますように。
でももう残りワンナウトでツーストライクで、
オレの出番はほとんど絶望的。
それで神頼み状態。
一発逆転、フォアでもデッドでもいいから繋がりますようにって、
まさに神頼み状態。
そりゃ、勘違いして布団も飛び出すよ。
ああ、オレ本当バカだなあ。
どこをどーやったら、
朝7時ジャストに雲雀に呼び出されるなんて思うんだろう。
いや、そもそも、雲雀ってオレ番号知ってんのかな?
勝手に呼び出された事はあるけど、毎回番号違うし、
オレが教えられた連絡先は、なんと草壁さんに通じてたし。
(連絡用だからそれで十分でしょって、そりゃ、そーなんだけどさあ……)
あーあ、最悪。
……サイアク、の、30歩ぐらい手前。
(うん。まだそこまでひどくない。)
ともかく、
おかげですっかり目が覚めてしまったので、
今日も雨で朝練はないので、
ランニングに行く時間ももう残っていないので、
制服に着替えて朝飯喰ったらツナの家に行くことにした。
きっと獄寺はもう来てる。
ケータイの設定を変えて貰おう。
こんな目の覚め方は、
(だって、絶対ヒバリだと思ったんだ。)
こんな目覚め方は、あんまり、うれしくない。
(ヒバリだと思ったんだよなぁ……。)
「あー? てめ、朝っぱらからシケたツラしてんじゃねーよ。」
ぽつんぽつんと雨粒が落ちる透明なビニール傘の下で、
獄寺の朝の挨拶はそれだった。
さっきまでまだ開かない玄関を見てニコニコしていたくせに、
オレを見る肩越しの視線はもう睨んでる。
「はよ、獄寺。ナニ? オレ調子悪そう? 心配してくれんの?」
「すっかよ、バーカ!!」
まーまー。となだめてそれから
「なあ、ケータイの着信音、一人分だけ変えたいんだけど、どーやんの?」
聞いたら、
「まずあどれすちょうをぐるーぷでわけてふぉるだでしていして……」
訳が分からなかったので、やっぱりまたオレのケータイは獄寺の手に託された。
「つか、お前のケータイ、重くねぇ? いつの機種だよ。」
「さー? 安いのから選んだから。」
ったく。
文句言いながら獄寺は親指でポチポチと、
持ち主のオレですら見た事ない画面を開いていく。
「で、誰のをどんなにしたいんだよ。」
「えーっと……」
部員は着信あったときに名前見ればわかる。
ツナも獄寺もわかる。
んで、だれも早朝とか深夜とかそんな非常識な時間には掛けてこない。
放課後だけだ。
だから寝ぼけて勘違いもしない。
だから、
「……ヒバリ、からのが、目覚ましと違えば。」
獄寺は眉をひそめる。
「お前、アイツのアドレス知ってんの?」
オレは首を横に振る。
「勝手にかかってくんのな。
毎回番号違うし、あと、非通知、だっけ? それだったり。」
獄寺は、いつもの馬鹿にしたとかあきれたとかそう言うのではなく、
もういっそ哀れな生き物を見る目で、
(そうだ確か英語で、 I が私なら、僕やオレって何って聞いた時、
こんな顔してた)
そんな目でオレを見てため息吐いて、
「ムリ。」
と、オレの胸にケータイを押し返した。
「できっかもしんねぇけど、面倒くせぇ。自分で調べやがれ。」
「えー。だって獄寺、これ、このまんまじゃ心臓に悪ィよ。」
「うーるーせ。てめーなんざ、えーえんに着信待ってどきどきしてやがれ。」
『うっわ、山本クン、少女マンガみてー。きもちわりー。』
獄寺はそう言おうとして、ちょうどその途中で、
がちゃりと玄関の開く音がした。
ぐるんと獄寺が身体をねじる。回れ、右。背筋を伸ばして直立不動。
「おはようございます!! 10代目、の……、」
勢いよく飛び出した言葉は、フォークボールより見事に途中で落ちた。
玄関から現れたのは、
「……の、お母様……」
だったのだ。
「……っ、と、あの、おはよう、ございます……」
同一人物とは思えない気の抜けた声で獄寺は繰り返す。
「おはよう、獄寺君。山本君。
いつも待たせちゃってごめんなさいね。
ツナもそろそろご飯食べ終わるはずだから」
「いっ、いえそんなぜんぜんっ!」
獄寺はがばっと顔を上げて、
ツナのおふくろさんの手に大きなゴミ袋があるのを見つけて、
「あ! ゴミ出しですか? オレ、手伝います!」
なんて言い出す。
「あら、ありがと。でも、これだけだから……」
「あ、じゃあ! オレ、傘を……! 」
「ありがとう、でも、獄寺君濡れちゃうでしょう?」
「いえっ! ぜんっぜん構いません!!」
必死な獄寺のやり取りを見ながら、
ああ、確かにこれは、とオレは思う。
獄寺はゴミ袋と玄関と、ちらちらちらちら忙しなく目線を移動させて、
ああ、獄寺はずーっと着信待ちだ。
永遠にドキドキしながら着信待ちだ。
たしかにこれは、きもちわりー、かもなあ。
獄寺が押し問答しているうちにまた玄関が開いて、
今度こそツナが出てきた。
で、タイミング悪く、
「おはよう」の声より先にドアが獄寺の背中に激突して、
獄寺は振り返って思いっきり犯人を睨みつける。
睨みつけて、犯人の正体を知って、顔が真っ青になって、
でも真っ青になったままニヤけだすから、すげぇ顔。
上擦ってひっくり返った声で叫ぶ。
「おっ、おはようございます!! 10代目!」
「お……おはよ、獄寺君。」
ああ、たしかにこれは、『きもちわりー』かなあ。
でも、『少女マンガ』みたいかなあ?
これを少女漫画と言うなら、
まさかコレ、『恋』とかゆうのかなあ、なんて、オレは思ったりする。
獄寺と違って女兄弟が居ないのでわからない。
ツナが傘を開く。
傘もう一つ分距離を開けて、獄寺が後に続く。
雨の通学路を歩き出す。
(あ、ゴミ袋持ってる。)
「おはよ、山本。」
「おっす。ツナ。あ、なぁツナ、昨日のアレ視た?」
「あー、うん。視た視た!」
オレは特には『どきどき』しないので、
着信を待つまでもなく向こうからかかってきたので、
オレはツナとちっとも気持ち悪くない男子中学生らしい朝の挨拶をしたら、
やっぱり獄寺はぎりぎりーっと睨んでいた。
「あの、獄寺君。」
「はいっ! なんですか10代目!」
「いや、えと。あの。ゴミ捨て場、過ぎちゃったよ?」
「あ、すみません! すぐ戻ります!」
ああ、獄寺はやっぱちょっと『きもちわりー』や。
で、オレとツナの会話はちっとも気持ち悪くないから、
オレはツナが好きだけど、これはきっと恋じゃない。
つまり
オレに『きもちわりー』なんて言うなんて、
じゃあ獄寺は時々『きもちわりー』なんて思ってるんだ。
今朝のオレは、どうだったのかなあ。
獄寺に聞いてみてみようかと思ったけど、
これは聞かない事にした。
あーあ。
オレも『きもちわりー』のかな?
とりあえず、着信音はどーにかしねーと。
だってこのままじゃ、獄寺の言う通り『えーえんにどきどき』してしまう。
それは困る。
ああでも、着信音変えるのめんどくさいな。
このままでもいいかな。
今日夜更かしして取説とにらめっこしながらそんな事するよりは、
早く寝て明日早起きする方が、
ぬかるんだグラウンドで自主トレする方が、
雨の中ロードワークする方が、
そっちのほうがいい気がする。
いや、それは、オレが野球が好きだからじゃなくて。
なくて……なんだろう。
今日は雨が降ってる。
三人とも傘を広げて歩いてる。
お互いちょっと遠いから、今日は黙って歩いている。
獄寺はきっと今、ツナからの着信待ちで
『えーえんにどきどき』している。
『えーえんにどきどき』してるから、
あの傘の下では『きもちわりー』の雨が降って獄寺を濡らしてる。
オレの傘の下は、何が降っているんだろう。
冷たい空気は嫌いじゃないから、
やっぱり今日は早く寝て、
明日は雨でも傘をささずにロードワークに行こうと思った。
二度寝してる布団の中じゃなくて、息を弾ませてランニング中なら、
きっと『えーえんにどきどき』なんかせずに着信を待っていられる。
|| STOP
言い訳反転>
初めて書いた中学生の山本の一人称の山ヒバ。
山本が、あまりにもフリーダムに勝手に喋り続けるのでとても困った。
さすが山本。
この山本語は注釈入れなきゃわからないだろ、書き直そう。
と思ったまま、手のつけ用がなくてお蔵入り。
ほんと、さすが山本。
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