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おいでませ。
    こちらは舞台裏、管理人のラクガキ帳カキカケblogです。
    もはや完全に整理整頓を放棄しています。
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こうしんりれき
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一時期拍手に突っ込んでおいたもの。
(クリックで捲れていくスクリプト作るのが面倒だったので。)



突然クリック劇場。

昨日、用があって獄寺君が家まで行ったら、
シャマルはまた女の人を口説いてたそうです。

「最っ低です! なんであんな奴頼ろうとしたんだか……」

その言い方じゃ、
まるで獄寺君は
シャマルのところに行った自分に
腹を立てている様にも聞こえる。
聞こえるけど、
獄寺君はそんなことちっとも考えてないんだろうなあ。






獄寺君から聞くシャマルの話は、
いつも片方だけすっぽり抜け落ちてて、
そう、
獄寺君は悪くなくて、
いっつも悪いのはシャマルだということになっている。

「獄寺君て、そこだけは真似しないんだね。」

何のことですか、と、獄寺君は一度瞬きした。

「獄寺君も、女の子大好きってなれば? シャマルみたいに。」

「な!」






「冗談キツイっスよ、10代目。なんでよりによってアイツの唯一の欠点を、」

「『唯一の』?」

う、あ、あ、って、
獄寺君の口唇がふるえる。

「いっ、今のは! 言葉のアヤです!!」

真っ赤になって反論するので、
ああ本当に獄寺君はシャマルが好きなんだなぁと思う。

獄寺君はシャマルが好きなんだなぁ…………。






そっか、うん。
知ってたけどさ。
知ってるけど。

「……ちなみに獄寺君。獄寺君から見て、オレの欠点は?」

獄寺君はまじまじとオレを見つめた。
ぐああ、と頬が赤くなる。
ぎゅうと右手を握りしめる。

「恐れ多いですが10代目!」






「強いてあげるとすれば欠点のないところが10代目の欠点です!!」

…………ああ、そう。
まあそう答えるだろうなあって、
知ってたけどね。

(獄寺君は結構勝手で、)
(良いか悪いかしかなくて、)
(オレのこと嫌いじゃないからそう言うんだろうけど、)

……わかってんだけどさ。




おしまい。。。





そしてまた今日も、
シャマルは女の人を口説いてたそうです。

「本当に最っ低です! なんであんな奴頼ろうとしたんだか……」

その言い方じゃ、
まるで獄寺君は
シャマルのところに行った自分に
腹を立てている様にも聞こえる。
聞こえるけど、
獄寺君はそんなことちっとも考えてないんだろうなあ。






獄寺君から聞くシャマルの話は、
やっぱりいっつも片方だけ抜け落ちてて、
そう、
獄寺君は悪くなくて、
いっつも悪いのはシャマルだということになっている。

「獄寺君て、そこだけは真似しないんだね。」

何のことですか、と、獄寺君は一度瞬きした。

「獄寺君も、女の子大好きってなれば? シャマルみたいに。」

「な!」






「冗談キツイっスよ、10代目。なんでよりによってアイツの唯一の欠点を、」

「『唯一の』?」

う、あ、あ、って、
獄寺君の口唇がふるえる。

「いっ、今のは! 言葉のアヤです!!」

真っ赤になって反論するので、
ああ本当に獄寺君はシャマルが好きなんだなぁと思う。

獄寺君はシャマルが好きなんだなぁ…………。






そっか、うん。
知ってたけどさ。
知ってるけど。

「……ちなみに獄寺君。獄寺君から見て、オレの欠点は?」

獄寺君はまじまじとオレを見つめた。
ぐああ、と頬が赤くなる。
ぎゅうと右手を握りしめる。

「恐れ多いですが10代目!」







「目に映るものすべて恋に落ちるその瞳が!」

「ちょぉっと待てェ!!!!」











ホスト部の環先輩が好きです。
お付き合い頂きありがとうございました。へこり。
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<山本はもてるんじゃないかなという空想前提で>

西棟3階廊下東端。選択音楽はサボろう(10代目は美術でいらっしゃるのでご一緒できないし)と思ったら先客がいて、誰か(しらねーけど追い払おう)と思ったら山本で、しかも見るからに落ち込んでいやがったので、いい気味だと思う。

「なに辛気臭ぇカオしてんだよ」
「…………フラれた」
「は?」

耳を疑う。
それから、ここしばらく山本が昼休みや放課後付き合いが悪かったことや、クラスの奴らに囲まれてにやにや質問責めにあっていたことなんかを思い出す。そうだこいつ、3年のなんとかいう女と付き合ってたんだっけ?

「フラれたのか」
「フラれたの。」

フラれたの、マルだ。フラれたのな、へらっではない。うわなんだこいつ、まじでへこんでやがんの。

熟慮の末、傷口を拡げてやることにした。

「三週間だっけ?」
「二週間。」
「短っ」

なら最初から付き合うなよ。

「だって」

聞いてもいないのに山本はだってと言った。

「だってしょーがねーじゃん。フツーなら断ってたんだぜ。なのにあのセンパイひどくてさ、いきなり廊下で付き合って、って。みんな見てるし、断れねーじゃん。」

いや待て、オレはおまえはそういうときこそへらへら笑ってかわすようなやつだと思ってたぞ。そういうの何回も目の前で見てるぞ。

「あれは、その前に予兆とかあって、オレも心構えできてんの。今度の先輩はいきなりだったから」

そりゃオレも顔は知ってたけどさー。

有名人同士というのは面倒臭いらしい。
つか、そんなもん観衆を味方に付けられた時点でてめーの負けじゃねぇか。やーい負け犬め。

「で、断れなくて付き合って、飽きて捨てられた、と。」
「言うなよぉ」

みょうにへにょへにょした声を出すので、気色悪い。もしかして姉貴に出くわした時のオレもこんななんだろうか……と思うと、こいつにはいろいろ借りもあるような、あんまここぞとばかりいじめるのもな、まるでオレの器が小さいみてーだしな、とか憐憫の情も湧いてしまう。

「……つか、何でそんな落ち込んでるんだよ」

ああいうのは、付き合って深く考えるだけ無駄なんだ。姉貴とかエロ医者とか、あいつらみんな思考回路が宇宙の果てにリンクしてるんだ。常人には及ばない。考えるだけ無駄。
なのに、山本は膝を抱えたまま、遠近法のモデルみたいなタイルばりの消失点を見詰めていた。
ああ、今頃10代目は何をしておいでだろう。たとえミミズがのたくっているようにしか見えかろうと10代目のお描きになったものならそれは……

「山本君て、」

ぼそっと言ったので、その存在を思い出した。なんだよ、まだ話す気あったのか。
あーはいはい。山本クンて?

「子供みたいでかわいいなって思ってたんだけど、付き合ってみたら本当にただのこどもだったんだもん」

……おお、その女なかなか真理を突いている。
山本は真理に繋がるタイルの消失点から目を逸らし、膝の間に顔を伏せた。

「もー、わっけわかんねー!どこ改善しろっての? こどもっぽいの直せばいいの? でもそしたら最初の惚れるキッカケもなくならねぇ? つかこどもってナニ? オレ先輩よりいっこ下だし!」

叫んだと思ったら山本はついに沈没した。絶対零度でメルトダウン。
よくそこまで落ち込めるもんだ。別におまえはその女が好きだったわけでもないだろうに。

「……ごくでらって冷てぇ」
「はあ?」

山本は、恨みがましい目というやつでオレを見た。
そんな目で見られてもなんも出ねぇよ。つか、その傷に塩塗り込まないだけオレの厚情に感謝しろ。

「せめてさぁ、なんか感想ない?」
「ねーよ。」
「聞いた癖になんにも?」
「聞いてやったけどなんにも。」

ごくでらは想像力が足りないんだ。
ぼそっと山本は呟いた。

「例えばごくでらがさ、」

山本は口を尖らせてそう切り出して、唐突に切り上げた。手で口に蓋をする。

「おいなんだよ、途中で止めんな」
「いや、でもちょっと……」

山本は口元を押さえ、俯いて……肩を震わせている。
ナニ急にうけてやがんだ。

「なんだよ、言えよ」
「いやその、ごくでらがさ……、」

明後日のほうに目を反らし、山本は両手をバンザイさせた。
おい、さっきまでの落ち込みはどこ行った?何だその恰好、どっかに放り投げたのか?
いいやがれ、とにらむと、にまぁと微妙な笑みを浮かべて山本は口を開いた。

「ごくでらがさ、ツナに、一生懸命だから右腕にするって言われて、で、そのあと一生懸命すぎていやだから辞めてって、言われたら?」

言われたら。

絶望的だ。

絶望的に絶望的だ。

(落ち込みはオレのところにきやがったのか)


獄寺君は、火の匂いでできている。
煙草の匂いと火薬の匂いだ。

オレが教室でぼーっとしていると、
満面の笑み、ってやつを顔にはりつけて、
彼はやってくる。
似合わない、と、思うんだ。
だって、『ごくでらくん』は『獄寺隼人』で
オレは『沢田』か『ツナ』か……でなけりゃ『ダメツナ』なんだ。
……て、何言ってるかわかんないよな。
ええと
『分不相応』なんだ、オレには。
たちの悪い冗談みたいだ。
へんだよ、やっぱこれ。
ムリがあるって。

オレの机に手をついて、
身を乗り出して
じゅーだいめ、じゅーだいめって言う、
彼は、このひとは、その光景は、
絶対ムリがあるってば。
みんなには、どー見えてると思ってんだろ。

オレは、直視できない。
真っすぐ見ることが出来なくて
頬杖をついて、
話を半分聞いているふりして
ヒヤヒヤしてる。
たのむから、
たーすーけーてー。

ふわん、と、胸の辺りから
煙のニオイがする。
制服に絡み付いて
きっともう
取れなくなってしまったんだろう。
煙草のニオイは吐息じゃなくて
身体に住み着くものなんだな。

(青少年の学ぶべきことじゃない)
(頼む、やっぱこっちこないで)
(これ以上ヘンなこと教えないで)

ふわんふわんふわん。
目を反らしても
顔のすぐ隣にあるそれは、
洗いざらした白いシャツは
火の匂いなので
逃げようもなくて、
オレは顔が熱くなる。

ああ、引火する。
08在庫整理第九弾。
これでおしまいです。おつかれさまでした。

完成済み。







>PLAY


『好きなの?』

正面切って聞かれるとなあ、と、彼は頭を掻いた。
照れているのかもしれないし、本当に返事に困っているのかも、誤魔化しているのかもしれない。
ひどく曖昧だが、そのほんの少し細められた目からは彼の人の良さがにじみ出ていて、その曖昧さを好ましいものにしていた。

「あ、そうだ、あれだ。長風呂とかこたつとか朝寝坊とかさ、居心地良過ぎて、自分から寝てるのか、布団に出してもらえないのかわかんなくなっちゃう感じ。そんな感じ。」

『そんな感じって、それは「好き」って感情が? それともその人が?』

今度こそ彼は答えず、あの曖昧な笑みで微笑んでいた。









その日(も)、姉は勝手に上がり込んでソファを陣取ってテレビを見ていた。夕方の再放送の恋愛ドラマだ。んなもん、10代目のお宅で見てこい、と思うが、沢田家ではこの時間はチビどものアニメの時間なんだそうだ。
ともかく、姉がリビングの真ん中に居座って微動だにしないので、隼人は姉に背を向けて、床にあぐらをかいてキッチンを見ていた。理不尽だ、と思いながら。
「そういえば、隼人」
姉が言った。音から察するに、テレビはCMに入ったところだ。
「あなたもやっとわかってきたわね。」
「……何がだよ。」
「すべては愛だという事よ。」
またそれか。
「ただ、姉の意見としてはもうちょっとイイオトコを選んだ方がいいんじゃないかと思うのだけれど、」
…………ん?
「てめっ! それは10代目の……」
隼人は問い質そうとぎりりと身体を捻ったが、姉がこちらを見ていた事に気付き、慌てて正面に向き直る。
「思うけれど、趣味は人それぞれだから、あなたがそれでいいなら、私は口を出す気はないわ。」
『そこに愛があれば、それでいいのよ。』
姉は繰り返した。
「知るかよ。そんな下らねーもんと一緒にすんな。」
床に向かって彼は吐き捨てた。


『すきなの?』
繰り返される、くだらない問いかけだと思う。

『すき』なの?
そんなの、名前なんか知るかよ。
ここに、確かに、消えない衝動がある。
その存在だけでで十分だろ。



|| STOP









言い訳反転>
あまりにもポエムなのでしまってました。
はずかしい。





08在庫整理第八弾。

完成しているけど自己没。







>PLAY


ケータイの音で飛び起きた。
雲雀だと思ったんだ。




連日の雨でここんとこグランドコンディションは最悪。
朝練はずっと中止状態、
放課後の手合わせもなし、
そんでついに、ロードワークも、今日はやる気なし。
だって雨なんだ。
だから起きる気がしなくて、目覚まし時計を無視し続けている。
5分おきに鳴るピーってアラームを布団の中から叩いて止めて、
(布団から出てメインスイッチ切るのも面倒くさい。)
オレはずるずるずるずる。
もう、6時45分だって。
考えられないような怠けっぷり。
なんだっけ? 一日の遅れを取り戻すのに、三日? かかるのに、なー……。
もっぺん枕に首を突っ込んだら、今度は、
後頭部にドリルで穴開ける気なんじゃねーのってくらい
容赦なく突き刺さる携帯電話の呼び出し音がした。

(え、コレ、もしかして、)

買ったばっかで使い方わかんなくって、
だから獄寺に「ともかくすぐ気がつきそうな音」って頼んだら、
本当にアタマが割れるようなスゴイ音を設定してくれた。
目覚ましからメールから、着信まで全部一緒。
だから。

「ヒバリッ!?」

寝ぼけたオレは布団を飛び出してバイブで暴れてるケータイを引っ掴んで、

『アラーム』
の文字に思いっきり凹んだ。
ケータイをデコに当てて座り込んでうなだれて、
ネクストサークルで祈ってる打者みたいだ。
オレに打順がつながりますように。
でももう残りワンナウトでツーストライクで、
オレの出番はほとんど絶望的。
それで神頼み状態。
一発逆転、フォアでもデッドでもいいから繋がりますようにって、
まさに神頼み状態。
そりゃ、勘違いして布団も飛び出すよ。
ああ、オレ本当バカだなあ。
どこをどーやったら、
朝7時ジャストに雲雀に呼び出されるなんて思うんだろう。
いや、そもそも、雲雀ってオレ番号知ってんのかな?
勝手に呼び出された事はあるけど、毎回番号違うし、
オレが教えられた連絡先は、なんと草壁さんに通じてたし。

(連絡用だからそれで十分でしょって、そりゃ、そーなんだけどさあ……)

あーあ、最悪。
……サイアク、の、30歩ぐらい手前。
(うん。まだそこまでひどくない。)




ともかく、
おかげですっかり目が覚めてしまったので、
今日も雨で朝練はないので、
ランニングに行く時間ももう残っていないので、
制服に着替えて朝飯喰ったらツナの家に行くことにした。
きっと獄寺はもう来てる。
ケータイの設定を変えて貰おう。
こんな目の覚め方は、

(だって、絶対ヒバリだと思ったんだ。)

こんな目覚め方は、あんまり、うれしくない。

(ヒバリだと思ったんだよなぁ……。)





「あー? てめ、朝っぱらからシケたツラしてんじゃねーよ。」

ぽつんぽつんと雨粒が落ちる透明なビニール傘の下で、
獄寺の朝の挨拶はそれだった。
さっきまでまだ開かない玄関を見てニコニコしていたくせに、
オレを見る肩越しの視線はもう睨んでる。

「はよ、獄寺。ナニ? オレ調子悪そう? 心配してくれんの?」
「すっかよ、バーカ!!」

まーまー。となだめてそれから
「なあ、ケータイの着信音、一人分だけ変えたいんだけど、どーやんの?」
聞いたら、
「まずあどれすちょうをぐるーぷでわけてふぉるだでしていして……」
訳が分からなかったので、やっぱりまたオレのケータイは獄寺の手に託された。

「つか、お前のケータイ、重くねぇ? いつの機種だよ。」
「さー? 安いのから選んだから。」

ったく。
文句言いながら獄寺は親指でポチポチと、
持ち主のオレですら見た事ない画面を開いていく。

「で、誰のをどんなにしたいんだよ。」
「えーっと……」

部員は着信あったときに名前見ればわかる。
ツナも獄寺もわかる。
んで、だれも早朝とか深夜とかそんな非常識な時間には掛けてこない。
放課後だけだ。
だから寝ぼけて勘違いもしない。
だから、

「……ヒバリ、からのが、目覚ましと違えば。」

獄寺は眉をひそめる。

「お前、アイツのアドレス知ってんの?」

オレは首を横に振る。

「勝手にかかってくんのな。
 毎回番号違うし、あと、非通知、だっけ? それだったり。」

獄寺は、いつもの馬鹿にしたとかあきれたとかそう言うのではなく、
もういっそ哀れな生き物を見る目で、
(そうだ確か英語で、 I が私なら、僕やオレって何って聞いた時、
 こんな顔してた)
そんな目でオレを見てため息吐いて、
「ムリ。」
と、オレの胸にケータイを押し返した。

「できっかもしんねぇけど、面倒くせぇ。自分で調べやがれ。」
「えー。だって獄寺、これ、このまんまじゃ心臓に悪ィよ。」
「うーるーせ。てめーなんざ、えーえんに着信待ってどきどきしてやがれ。」

『うっわ、山本クン、少女マンガみてー。きもちわりー。』
獄寺はそう言おうとして、ちょうどその途中で、
がちゃりと玄関の開く音がした。
ぐるんと獄寺が身体をねじる。回れ、右。背筋を伸ばして直立不動。

「おはようございます!! 10代目、の……、」

勢いよく飛び出した言葉は、フォークボールより見事に途中で落ちた。
玄関から現れたのは、
「……の、お母様……」
だったのだ。

「……っ、と、あの、おはよう、ございます……」

同一人物とは思えない気の抜けた声で獄寺は繰り返す。

「おはよう、獄寺君。山本君。
 いつも待たせちゃってごめんなさいね。
 ツナもそろそろご飯食べ終わるはずだから」
「いっ、いえそんなぜんぜんっ!」

獄寺はがばっと顔を上げて、
ツナのおふくろさんの手に大きなゴミ袋があるのを見つけて、
「あ! ゴミ出しですか? オレ、手伝います!」
なんて言い出す。

「あら、ありがと。でも、これだけだから……」
「あ、じゃあ! オレ、傘を……! 」
「ありがとう、でも、獄寺君濡れちゃうでしょう?」
「いえっ! ぜんっぜん構いません!!」

必死な獄寺のやり取りを見ながら、
ああ、確かにこれは、とオレは思う。
獄寺はゴミ袋と玄関と、ちらちらちらちら忙しなく目線を移動させて、
ああ、獄寺はずーっと着信待ちだ。
永遠にドキドキしながら着信待ちだ。
たしかにこれは、きもちわりー、かもなあ。
獄寺が押し問答しているうちにまた玄関が開いて、
今度こそツナが出てきた。
で、タイミング悪く、
「おはよう」の声より先にドアが獄寺の背中に激突して、
獄寺は振り返って思いっきり犯人を睨みつける。
睨みつけて、犯人の正体を知って、顔が真っ青になって、
でも真っ青になったままニヤけだすから、すげぇ顔。
上擦ってひっくり返った声で叫ぶ。

「おっ、おはようございます!! 10代目!」
「お……おはよ、獄寺君。」

ああ、たしかにこれは、『きもちわりー』かなあ。
でも、『少女マンガ』みたいかなあ?
これを少女漫画と言うなら、
まさかコレ、『恋』とかゆうのかなあ、なんて、オレは思ったりする。
獄寺と違って女兄弟が居ないのでわからない。

ツナが傘を開く。
傘もう一つ分距離を開けて、獄寺が後に続く。
雨の通学路を歩き出す。
(あ、ゴミ袋持ってる。)

「おはよ、山本。」
「おっす。ツナ。あ、なぁツナ、昨日のアレ視た?」
「あー、うん。視た視た!」

オレは特には『どきどき』しないので、
着信を待つまでもなく向こうからかかってきたので、
オレはツナとちっとも気持ち悪くない男子中学生らしい朝の挨拶をしたら、
やっぱり獄寺はぎりぎりーっと睨んでいた。


「あの、獄寺君。」
「はいっ! なんですか10代目!」
「いや、えと。あの。ゴミ捨て場、過ぎちゃったよ?」
「あ、すみません! すぐ戻ります!」

ああ、獄寺はやっぱちょっと『きもちわりー』や。
で、オレとツナの会話はちっとも気持ち悪くないから、
オレはツナが好きだけど、これはきっと恋じゃない。



つまり
オレに『きもちわりー』なんて言うなんて、
じゃあ獄寺は時々『きもちわりー』なんて思ってるんだ。
今朝のオレは、どうだったのかなあ。
獄寺に聞いてみてみようかと思ったけど、
これは聞かない事にした。
あーあ。
オレも『きもちわりー』のかな?
とりあえず、着信音はどーにかしねーと。
だってこのままじゃ、獄寺の言う通り『えーえんにどきどき』してしまう。
それは困る。
ああでも、着信音変えるのめんどくさいな。
このままでもいいかな。
今日夜更かしして取説とにらめっこしながらそんな事するよりは、
早く寝て明日早起きする方が、
ぬかるんだグラウンドで自主トレする方が、
雨の中ロードワークする方が、
そっちのほうがいい気がする。
いや、それは、オレが野球が好きだからじゃなくて。
なくて……なんだろう。



今日は雨が降ってる。
三人とも傘を広げて歩いてる。
お互いちょっと遠いから、今日は黙って歩いている。
獄寺はきっと今、ツナからの着信待ちで
『えーえんにどきどき』している。
『えーえんにどきどき』してるから、
あの傘の下では『きもちわりー』の雨が降って獄寺を濡らしてる。
オレの傘の下は、何が降っているんだろう。

冷たい空気は嫌いじゃないから、
やっぱり今日は早く寝て、
明日は雨でも傘をささずにロードワークに行こうと思った。

二度寝してる布団の中じゃなくて、息を弾ませてランニング中なら、
きっと『えーえんにどきどき』なんかせずに着信を待っていられる。


|| STOP









言い訳反転>

初めて書いた中学生の山本の一人称の山ヒバ。
山本が、あまりにもフリーダムに勝手に喋り続けるのでとても困った。
さすが山本。
この山本語は注釈入れなきゃわからないだろ、書き直そう。
と思ったまま、手のつけ用がなくてお蔵入り。
ほんと、さすが山本。


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