おいでませ。
-
こちらは舞台裏、管理人のラクガキ帳カキカケblogです。
もはや完全に整理整頓を放棄しています。
ご気楽にどうぞ。
こうしんりれき
- ものやおもふとひとのとふまで (ツナと獄寺と…) (08/07)
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- 花魁パロ、こんなかんじです。 (パロ企画) (01/10)
- 春琴抄パロ、こんなかんじです。 (パロ企画) (04/04)
- 無責任にパロディ企画します。 (パロ企画) (03/29)
- ぎるてぃびゅーてぃーらぶ (ツナと獄寺と…) (02/12)
- 感染ドミノ(山本と獄寺)(色恋ではない。) (そのほかの。) (02/07)
身体は資本。
なんていうけど
獄寺君の場合はもう、
身体を借金のカタにして
むりやり行動しているような気がする。
なんかもう、しょっちゅう倒産寸前の危機。
今日もまた、ボロッボロで帰ってきた。
いや、でも、10代目。オレ、ちゃんと生きてますから。
うん。
学習してくれたのは認めるよ。
認めるけど、理解してないよね。
ぜったい通じてないよね。
わかってないよね。
この人ぜったいそのうち足の一本ぐらい吹っ飛ばして帰って来て、
それでも自信満々、
生きてますからって言い張るよね。
こまった、なぁ。
……ああ、そうだ。
「ねぇ獄寺君。オレ、獄寺君の身体好きだよ。」
彼は顔をあからめた。
ああ、だからそーじゃないんだってば。
そういう意味じゃ。
道は、険しい。
まぁ、あんまり怪我しないで帰って来てくれれば、
しばらくは勘違いのまんまでもいいんだけどさ。
なんていうけど
獄寺君の場合はもう、
身体を借金のカタにして
むりやり行動しているような気がする。
なんかもう、しょっちゅう倒産寸前の危機。
今日もまた、ボロッボロで帰ってきた。
いや、でも、10代目。オレ、ちゃんと生きてますから。
うん。
学習してくれたのは認めるよ。
認めるけど、理解してないよね。
ぜったい通じてないよね。
わかってないよね。
この人ぜったいそのうち足の一本ぐらい吹っ飛ばして帰って来て、
それでも自信満々、
生きてますからって言い張るよね。
こまった、なぁ。
……ああ、そうだ。
「ねぇ獄寺君。オレ、獄寺君の身体好きだよ。」
彼は顔をあからめた。
ああ、だからそーじゃないんだってば。
そういう意味じゃ。
道は、険しい。
まぁ、あんまり怪我しないで帰って来てくれれば、
しばらくは勘違いのまんまでもいいんだけどさ。
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諸事情によりボスと守護者全員の署名入りの書類が必要になりました。
約一名物理的にペンを持てない状態の人がいるので、
沢田さんが代表して全員分書くことになりました。
以下、中学生のツナと獄が2人向かい合って机に座っているところを想像してお読みください。
(台本形式です。)
「ええと、まずオレね。
沢田、綱……ああもう、なんでここだけこんな画数多いかなあ。ローマ字じゃダメなの?」
「(送られて来た手紙を見ながら)そーゆー決まりらしいっス。」
「めんどくさいなあ、もう。えーと、綱吉、と。次、獄寺君ね。
えーと、ごく……(書けない。恨めしげに獄寺を見る)」
「あの、10代目。オレ代わりに書きましょーか?」
「いいよ。そーゆー決まりなんだろ。……ごめん、『ごく』ってどんな字だっけ?」
「まず、けものへんに、」
「ケモノヘン?」
「……カタカナの『オ』みたいな奴です。」
「ああ、あれか。これに?」
「言うって書いて、」
「(カキカキ)」
「それから犬です。」
「……犬?」
「犬です。」
「いぬ……(まじまじと獄寺を見る。)」
「あの……10代目?」
「ごっ、ごめん、なんでもない。(下を向く、肩が震えている)
わかった、犬ね。(こっそり笑っている)
で『寺』に……『はやと』?」
「はい!」
「……あの、そーじゃなくて、漢字……」
「あ! ……スミマセン、『はやぶさ』に『ひと』です。」
「(だから、はやぶさがわかんないんだってば)」
「あ、えーっと、(どうしよう説明できねぇ)
ちょっと待ってください、ケータイ出します!
(がさがさピコピコ)こーゆー字っス。」
「あ、ありがと。それで、『と』は『人』だね。
あー、最後2画でよかったー。」
「次、山本っすね。」
「やった。山本は簡単だ。三文字だし。」
「(くっそ、あんのやろ)そーっスね!」
「で、次、ヒバリさん…………(もうお手上げ。)獄寺君、ひばりって?」
「『くも』に『すずめ』、こーです。(ケータイを見せる。)」
「あはは、まんまだ。雲とヒバードじゃん。」
「そっすね! んで、『きょうや』は……げ、変換候補多いな。ったく……
(訓読みから打ち直す)『きょう』はコレです。」
「ん……(画面には恭しいと表示されている)これ、なんて読むの?」
「うやうやしい、です。」
「うやうやしいって……なんか、そういう意味だよね。」
「はい。礼儀正しいとか、敬意を表するとか、そーゆー意味っスね。」
「(に、似合わない……)」
「で、次『や』……げ、なんだよこれ」
「どーしたの?(覗き込むと大量の変換候補『也、哉、矢、夜、谷、……』)
うっわ、めっちゃくちゃ群れてるし!」
「あー、あったこれだ、『弥』。ったく、その場にいなくてもめんどくせぇ奴っスね!」
「とか言ってたら窓から現れたりして」
「ええ?」
「冗談。えーと、次は?」
「晴れだから、笹川です。」
「ん。わかった、ささ……(書きかけて手を止める)
待った、嫌な予感がする! さきにあっち済まそう!」
「ど、どーしたんスか? 10代目」
「なんでもない。嫌なの先に済まそうと思って。えーとあいつは……
ああほら! やっぱり名前書けない! どんな字だっけ!」
「骨に、イノシシ年の亥ですけど」
「だめ!ホネが書けない!」
「こーゆー字っス。(ケータイを見せる)」
「うあ、ほらみろ、やっぱり画数多いし。一文字目は『六』とか小学生レベルのくせにさ!
大体なんでイタリア人のくせにこんな面倒くさい漢字なんだよ、あいつ。」
「…………ええと……(ちょっと胸が痛い獄寺隼人イタリア出身)」
「よし、書けた。クロームはいいんだよね?」
「はい。骸だけで。」
「よかった。これで『霧』は『髑髏』も、とか言われたら一人で何画だよってトコだった。」
「ああ、それで。」
「そー、それで。で、最後はお兄さんっと。やった、すげー画数少ない。」
「守護者ん中じゃダントツっスね。」
「よし! おわったー! 次もこの順で書こっと、最後がカンタンだと気がラクだし!」
「おつかれさまっス! 10代目!」
ツナは、あーつかれた、と、ポイッとペンを投げ捨てた。
獄寺も携帯をしまう。
あれ、ところで何か忘れているような……
「一番画数少ないのはランボさんだもんねーっ!
ちゃんとイタリア人でイタリア語の名前だもんね、
筆記体で書けば一筆書き出来るんだもんねーっ!!」
「ああ、うん。
悪かったって、ごめん。
泣くなよ、な?」
約一名物理的にペンを持てない状態の人がいるので、
沢田さんが代表して全員分書くことになりました。
以下、中学生のツナと獄が2人向かい合って机に座っているところを想像してお読みください。
(台本形式です。)
「ええと、まずオレね。
沢田、綱……ああもう、なんでここだけこんな画数多いかなあ。ローマ字じゃダメなの?」
「(送られて来た手紙を見ながら)そーゆー決まりらしいっス。」
「めんどくさいなあ、もう。えーと、綱吉、と。次、獄寺君ね。
えーと、ごく……(書けない。恨めしげに獄寺を見る)」
「あの、10代目。オレ代わりに書きましょーか?」
「いいよ。そーゆー決まりなんだろ。……ごめん、『ごく』ってどんな字だっけ?」
「まず、けものへんに、」
「ケモノヘン?」
「……カタカナの『オ』みたいな奴です。」
「ああ、あれか。これに?」
「言うって書いて、」
「(カキカキ)」
「それから犬です。」
「……犬?」
「犬です。」
「いぬ……(まじまじと獄寺を見る。)」
「あの……10代目?」
「ごっ、ごめん、なんでもない。(下を向く、肩が震えている)
わかった、犬ね。(こっそり笑っている)
で『寺』に……『はやと』?」
「はい!」
「……あの、そーじゃなくて、漢字……」
「あ! ……スミマセン、『はやぶさ』に『ひと』です。」
「(だから、はやぶさがわかんないんだってば)」
「あ、えーっと、(どうしよう説明できねぇ)
ちょっと待ってください、ケータイ出します!
(がさがさピコピコ)こーゆー字っス。」
「あ、ありがと。それで、『と』は『人』だね。
あー、最後2画でよかったー。」
「次、山本っすね。」
「やった。山本は簡単だ。三文字だし。」
「(くっそ、あんのやろ)そーっスね!」
「で、次、ヒバリさん…………(もうお手上げ。)獄寺君、ひばりって?」
「『くも』に『すずめ』、こーです。(ケータイを見せる。)」
「あはは、まんまだ。雲とヒバードじゃん。」
「そっすね! んで、『きょうや』は……げ、変換候補多いな。ったく……
(訓読みから打ち直す)『きょう』はコレです。」
「ん……(画面には恭しいと表示されている)これ、なんて読むの?」
「うやうやしい、です。」
「うやうやしいって……なんか、そういう意味だよね。」
「はい。礼儀正しいとか、敬意を表するとか、そーゆー意味っスね。」
「(に、似合わない……)」
「で、次『や』……げ、なんだよこれ」
「どーしたの?(覗き込むと大量の変換候補『也、哉、矢、夜、谷、……』)
うっわ、めっちゃくちゃ群れてるし!」
「あー、あったこれだ、『弥』。ったく、その場にいなくてもめんどくせぇ奴っスね!」
「とか言ってたら窓から現れたりして」
「ええ?」
「冗談。えーと、次は?」
「晴れだから、笹川です。」
「ん。わかった、ささ……(書きかけて手を止める)
待った、嫌な予感がする! さきにあっち済まそう!」
「ど、どーしたんスか? 10代目」
「なんでもない。嫌なの先に済まそうと思って。えーとあいつは……
ああほら! やっぱり名前書けない! どんな字だっけ!」
「骨に、イノシシ年の亥ですけど」
「だめ!ホネが書けない!」
「こーゆー字っス。(ケータイを見せる)」
「うあ、ほらみろ、やっぱり画数多いし。一文字目は『六』とか小学生レベルのくせにさ!
大体なんでイタリア人のくせにこんな面倒くさい漢字なんだよ、あいつ。」
「…………ええと……(ちょっと胸が痛い獄寺隼人イタリア出身)」
「よし、書けた。クロームはいいんだよね?」
「はい。骸だけで。」
「よかった。これで『霧』は『髑髏』も、とか言われたら一人で何画だよってトコだった。」
「ああ、それで。」
「そー、それで。で、最後はお兄さんっと。やった、すげー画数少ない。」
「守護者ん中じゃダントツっスね。」
「よし! おわったー! 次もこの順で書こっと、最後がカンタンだと気がラクだし!」
「おつかれさまっス! 10代目!」
ツナは、あーつかれた、と、ポイッとペンを投げ捨てた。
獄寺も携帯をしまう。
あれ、ところで何か忘れているような……
「一番画数少ないのはランボさんだもんねーっ!
ちゃんとイタリア人でイタリア語の名前だもんね、
筆記体で書けば一筆書き出来るんだもんねーっ!!」
「ああ、うん。
悪かったって、ごめん。
泣くなよ、な?」
山本が誕生日なのでキャッチボールをしてみようと思ったけど、
前日の練習の段階でリボーンと獄寺がいつものアレな展開で
ツナは手を怪我してしまったので
獄寺が山本とキャッチボールをすることになりました。
『オレが勝ったらオレが10代目の右腕だからな!』
そんな感じでどうぞ。
「やきゅうごっこ」
言うだけあって、獄寺の投球フォームは様になっていた。
軽く肩幅に足を開き、胸元に球を構える。グローブの中で握りを確かめる。肩は無駄なく脱力している。背筋も綺麗に伸びている。一度息を吐き、軽く身体を前後に揺らし、足場を確かめる。
息が止まる。ぐいと胸が開かれ、右腕が延びる。しなるように、シャープな弧を描いてボールが加速されていく。
「果てろ!」
気迫とともに打ち出された白球は、まっすぐにまっすぐに、青空目掛けて……山本の左肩のかなり上方に飛んでいった。
「うわっ、獄寺ノーコン!」
言葉より早く、トンッと軽い足音で山本はジャンプする。高く腕を掲げ背筋を反らし、ポスンと軽い音を立ててボールは山本のミットに収まった。
でも、筋は悪くないな。
山本は思う。
もっとまっすぐ、取りやすい位置に投げてくれれば……
「あーっ、山本てめー!」
考えを獄寺の声が遮った。
「捕りやがったな、オレの球!」
……ん?
「獄寺、テニスじゃねーんだから。キャッチボールって取りやすい位置に投げるもんなのな」
説明よりやって見せたほうが早い。山本は投球フォームに入った。ただし、胸は開かない。腕のフリもコンパクトに。獄寺に怪我させないように。いつもチームメイトにやるように、細心の注意を払って。
放たれたボールは、ぽすっと軽い音を立てて胸元に構えた獄寺のミットに収まった。
「おい。」
手の中の白球を睨み、獄寺が刺々した声を出す。
「てめ、今加減しやがったな」
「や、だって獄寺初心者だし」
「ふっざけんな! 本気でやれって言ったろーが!見てろよ、構えろ!」
獄寺は再び投球フォームに入る。今度は真っすぐに、突き刺さるように、山本のミットに飛び込んで来た。手応えは悪くない。確かな重みもある。
微かな表情の変化を見破ったように、獄寺は誇らしげに宣誓する。
「見たか! 大体なぁ、投げることならオレのほうが本職なんだよ。」
ああ、そういやいつもなげてるよな、花火。
よし。
山本は軽くステップを踏んで一歩後に下がった。
「じゃ、今度は八割な」
振りかぶる。体重移動に合わせ、思いきり、前方に打ち出す。ぼすっ。重い音を立て、航跡すらのこさず、気付けば白球はミットの中だ。
「……っ、てぇー……」
獄寺がグローブから手を引き抜いた。赤くなっている。ヒリヒリと熱いのだろう、息を吹き掛ける。
「てめ、何しやがる。いてーじゃねーか!」
「あ、あのさ、獄寺君。」
観戦に徹していたツナが、遂に怖ず怖ずと声をかけた。
「本気出せっていったの、獄寺君だろ?」
「つか今の、八割なのな。」
「……くっそー」
マウンドに立つピッチャーのように、獄寺はコンクリートの床を踏み鳴らす。
「みってろよ。次で討ち取ってやる!」
半ば血走った獄寺の目を見ながら、山本はまた一歩後退する。
獄寺は投球モーションに移る。
どんと踏み出した足に全体重が移行する。膝が折れて力が蓄積されていく。上腕だけじゃない、今度は身体全体をしならせて、ボールが弾き出される。
今までにない衝撃が、山本の左手に走った。びりびりする。今までで、1番。
やっぱ獄寺、センスあるのな。
フォームはどんどん洗練されていくし、距離を広げているのに、球はぐいぐい飛距離を延ばし、重くなっていく。
誇らしげな、その顔を見る。
「っしゃ! 見てました? 10代目! 今のオレの球っ!」
獄寺は満面の笑みをツナに向けていた。
そしてまた、山本は手の中の白球に目を戻す。
山本の野球センスは、チーム内でもずば抜けている。おまけに地道な努力を惜しまないから、彼の技術は、並の中学生のそれを遥かに凌駕している。
実際、彼の強肩に敵うものは部員にはいない。しかし、全9回、彼の本気の球を受け続けられるキャッチャーも、やはり、いないのだ。実力を持て余すひとりきりのエース。
しかし、山本の強打力もやはりチームにとって欠かせないものだ。だから、山本は普段は外野にいる。マウンドに上がれるのはほんの数球、ピンチを凌ぐときだけ。そして、キャッチャーの肩を壊さないよう、かつ、かならず三振で仕留められるよう、(球数が増えれば、キャッチャーへの負担も増す)細心の注意を払って、山本は投げるのだ。
試合では、チームメイトには、本気で投げたことなんて、ない。
ネットに向かって、自主トレでしか、ない。
つまらないなんて思わない。不満なんてない。頼りにしてるぜ、なんて肩を叩かれる。三者凡退でベンチに帰ればハイタッチが待ってる。
不満なんてない。野球は楽しい。
でも
投げてみたい。試合で、本気で。
「おい、どーしたよ山本! 負けをみとめっか?」
獄寺が声を張り上げて、山本は現実に引き戻された。
「まさか」
山本は呟いた。手の中の白球に向かって。
「じゃーごくでらー。肩慣らし済んだとこで本気出すからな。しゃがんでー」
「はあ?」
「キャッチャーだよ。キャッチャー。で、ツナ。その辺立ってくんね? 立ってるだけでいいから。うん、そー、その辺。バッターボックス。」
指示を出してから、山本は二人に背を向ける。適当に距離をとって、振り返る。
うん。この辺だな。マウンドがないのは残念だけど、まあぜいたくは言わない。
「うし。んじゃ本気でなげっからな。獄寺エラーすんなよー!」
「ちょ、待て!10代目に当たったらどーすんだ!」
「ははっ。デッドボールなんか出さねーって」
ツナを見ると緊張した面持ちでこっちを見ている。
「本当に、ツナにはぜってー当てねーから」
「……うん。山本が言うんなら、信じるよ。」
ふっとツナは表情を緩めた。対照的に、獄寺の眉間のシワは深くなる。
「つか、隣にオレがいる以上10代目にてめーのヘナチョコ球が当たるわけねんだよ。」
ぶつぶつ呟いて、そしてまた声を張り上げる。
「おい、オレ、マスクもなんもしてねーぞ! どーすんだよ」
「あー……。ワリィ、いざって時は適当に避けてくんね?」
「はあ!?」
「獄寺ならどーにかなんじゃね? それに、ヘナチョコ球なんだろ。」
「…………上等じゃねーか。」
獄寺は腰を落とし、ミットを構える。
プロテクタもなにもないけど、そのグローブだってキャッチャー用じゃないけど、でも、獄寺ならどうにかなるだろう。
山本は目を閉じた。
9回の裏、一点差、2アウト満塁、カウントツースリー。
打たせて捕るなんて不可能。
おまけに、ここで負けたらトーナメント敗退。先輩達は引退。
文句なしの全力投球で、ストライクをとって、終わらせる。
一つ、息を吐く。グローブの中で、ボールを転がして、握りを確かめる。
後は、ただ、投げるだけ。
いつもなら、そのはずだった。なのに、何故か今日は、心が揺らいだ。グリップが決まらない。
関係、ないんじゃないか?
疑念が心を占めた。
カウントも、敗退も、先輩の引退も。
チームメイトのコンディションとか、交代させられた先発投手の気持ちとか。
だってここは屋上で、そこにいんのはツナと獄寺で、
オレがしたいのは
ただ、本気で投げること、それだけ。
ひたりと吸い付くように右手にボールが収まった。
ただ、全力で、投げるだけ。
息を吐く。目を見開く。胸元にボールを構える。ゆっくりと、時が止まっていく。両手を高く掲げて、ワインドアップ。もう、キャッチャーミットしか見えていない。心から、言葉が消えていく。腕を降ろす。足を掲げる。肩を開く。踏み込む。腕がしなり、風を切る。そして、リリース…………
『そんで、そのあとは?』
唐突に、言葉が帰って来た。
『そのあとは?』
『今ここで全力で投げて、その後は?』
『二人はチームメイトじゃない』
『ふたりとは野球はできない』
『オレは二度と本気じゃ投げられない』
『今ここで本気で投げて、でも、次なんてない』
キィーンと頭を揺さぶるような音がした。
頭の中からした、と、山本は思った。が、
ィーンコォーンカァーンコォーン
間の抜けた音が続いて、予鈴だ、とツナが呟く。
リリースし損ねたボールが指に引っ掛かってコロンと落ちる。どころか、集中の途切れた山本は、おもいっきり態勢を崩して前につんのめった。
「ちょ、山本!? 大丈夫?」
「なにやってんだ、おまえ」
「いや、ちょっと……びっくりして」
……かっこわりー…………
地面に転がったボールに手を伸ばして、山本はそのまま立ち上がれない。
生まれて初めてだ。投球の途中でこけるなんて。しかも、全力投球の途中で。おまけに、今日は誕生日。
ちょっと軽く死にたい気分だった。ともかく今年一年は幸先悪い気がする。立ち直れない。
「山本、本当に大丈夫?まさか足くじいた?」
「あ、いや、」
ツナに駆け寄られてやっと、慌てて山本は立ち上がる。
「平気。なんともねーよ。」
「そか、ならよかった。遊びで怪我しちゃ元も子もないもんね。」
『遊び』
山本はツナの言葉を繰り返す。
さっきの感覚と、部活の試合と、どっちが『遊び』だろう。
「どーしようか。まだちょっと時間あるけど、さっきの仕切り直す?」
「いや、やめとく。教室戻ろうぜ」
もう一度、投げようという気にはなれなかった。
「てことはオレの不戦勝だな!」
「……あの、獄寺君、だからキャッチボールっていうのはさ……」
「はは、まぁいーんじゃね? そーだな、寿司でもおごろうか。多分今日なら親父も出してくれんじゃねーかな。獄寺、それでいいか?」
「……寿司か……」
獄寺は悩むそぶりを見せた。
「ツナも来るだろ?」
「いーの? なんかいっつもご馳走になってばっかだよ?」
「気にすんなって。その手の怪我の分。親父も、オレが友達つれてくと喜ぶしな。
で、獄寺は?」
「10代目が行くんなら、行く。」
「よし。じゃあ決まりな。」
山本はそこで一呼吸おいた。くるっと獄寺に向き直る。
「そんかわり、ツナの右腕は保留な。」
「ああ!?」
獄寺は一段高い声を上げる。
「てめーのは『ごっこ』だろーが!」
うん。マフィアごっこだ。
でも、『ごっこ』とか『遊び』とか『本気』とか、そんなのは誰が決めるんだろう。
「でも獄寺だってさぁ……」
『本気』なものがひとつだけあって、それ以外は全部『遊び』なんて、そんな簡単なものじゃないと思うんだ。
「さっきマジだっただろ。野球ごっこ。」
「あ、あれは……!」
獄寺は、顔を紅潮させて口ごもってしまった。
ほらオレたちには、まだわからないんだ。
本気と遊びの違いなんて、14になったばかりの、オレには、まだ。
.08.07.23/初出.08.04.25
前日の練習の段階でリボーンと獄寺がいつものアレな展開で
ツナは手を怪我してしまったので
獄寺が山本とキャッチボールをすることになりました。
『オレが勝ったらオレが10代目の右腕だからな!』
そんな感じでどうぞ。
「やきゅうごっこ」
言うだけあって、獄寺の投球フォームは様になっていた。
軽く肩幅に足を開き、胸元に球を構える。グローブの中で握りを確かめる。肩は無駄なく脱力している。背筋も綺麗に伸びている。一度息を吐き、軽く身体を前後に揺らし、足場を確かめる。
息が止まる。ぐいと胸が開かれ、右腕が延びる。しなるように、シャープな弧を描いてボールが加速されていく。
「果てろ!」
気迫とともに打ち出された白球は、まっすぐにまっすぐに、青空目掛けて……山本の左肩のかなり上方に飛んでいった。
「うわっ、獄寺ノーコン!」
言葉より早く、トンッと軽い足音で山本はジャンプする。高く腕を掲げ背筋を反らし、ポスンと軽い音を立ててボールは山本のミットに収まった。
でも、筋は悪くないな。
山本は思う。
もっとまっすぐ、取りやすい位置に投げてくれれば……
「あーっ、山本てめー!」
考えを獄寺の声が遮った。
「捕りやがったな、オレの球!」
……ん?
「獄寺、テニスじゃねーんだから。キャッチボールって取りやすい位置に投げるもんなのな」
説明よりやって見せたほうが早い。山本は投球フォームに入った。ただし、胸は開かない。腕のフリもコンパクトに。獄寺に怪我させないように。いつもチームメイトにやるように、細心の注意を払って。
放たれたボールは、ぽすっと軽い音を立てて胸元に構えた獄寺のミットに収まった。
「おい。」
手の中の白球を睨み、獄寺が刺々した声を出す。
「てめ、今加減しやがったな」
「や、だって獄寺初心者だし」
「ふっざけんな! 本気でやれって言ったろーが!見てろよ、構えろ!」
獄寺は再び投球フォームに入る。今度は真っすぐに、突き刺さるように、山本のミットに飛び込んで来た。手応えは悪くない。確かな重みもある。
微かな表情の変化を見破ったように、獄寺は誇らしげに宣誓する。
「見たか! 大体なぁ、投げることならオレのほうが本職なんだよ。」
ああ、そういやいつもなげてるよな、花火。
よし。
山本は軽くステップを踏んで一歩後に下がった。
「じゃ、今度は八割な」
振りかぶる。体重移動に合わせ、思いきり、前方に打ち出す。ぼすっ。重い音を立て、航跡すらのこさず、気付けば白球はミットの中だ。
「……っ、てぇー……」
獄寺がグローブから手を引き抜いた。赤くなっている。ヒリヒリと熱いのだろう、息を吹き掛ける。
「てめ、何しやがる。いてーじゃねーか!」
「あ、あのさ、獄寺君。」
観戦に徹していたツナが、遂に怖ず怖ずと声をかけた。
「本気出せっていったの、獄寺君だろ?」
「つか今の、八割なのな。」
「……くっそー」
マウンドに立つピッチャーのように、獄寺はコンクリートの床を踏み鳴らす。
「みってろよ。次で討ち取ってやる!」
半ば血走った獄寺の目を見ながら、山本はまた一歩後退する。
獄寺は投球モーションに移る。
どんと踏み出した足に全体重が移行する。膝が折れて力が蓄積されていく。上腕だけじゃない、今度は身体全体をしならせて、ボールが弾き出される。
今までにない衝撃が、山本の左手に走った。びりびりする。今までで、1番。
やっぱ獄寺、センスあるのな。
フォームはどんどん洗練されていくし、距離を広げているのに、球はぐいぐい飛距離を延ばし、重くなっていく。
誇らしげな、その顔を見る。
「っしゃ! 見てました? 10代目! 今のオレの球っ!」
獄寺は満面の笑みをツナに向けていた。
そしてまた、山本は手の中の白球に目を戻す。
山本の野球センスは、チーム内でもずば抜けている。おまけに地道な努力を惜しまないから、彼の技術は、並の中学生のそれを遥かに凌駕している。
実際、彼の強肩に敵うものは部員にはいない。しかし、全9回、彼の本気の球を受け続けられるキャッチャーも、やはり、いないのだ。実力を持て余すひとりきりのエース。
しかし、山本の強打力もやはりチームにとって欠かせないものだ。だから、山本は普段は外野にいる。マウンドに上がれるのはほんの数球、ピンチを凌ぐときだけ。そして、キャッチャーの肩を壊さないよう、かつ、かならず三振で仕留められるよう、(球数が増えれば、キャッチャーへの負担も増す)細心の注意を払って、山本は投げるのだ。
試合では、チームメイトには、本気で投げたことなんて、ない。
ネットに向かって、自主トレでしか、ない。
つまらないなんて思わない。不満なんてない。頼りにしてるぜ、なんて肩を叩かれる。三者凡退でベンチに帰ればハイタッチが待ってる。
不満なんてない。野球は楽しい。
でも
投げてみたい。試合で、本気で。
「おい、どーしたよ山本! 負けをみとめっか?」
獄寺が声を張り上げて、山本は現実に引き戻された。
「まさか」
山本は呟いた。手の中の白球に向かって。
「じゃーごくでらー。肩慣らし済んだとこで本気出すからな。しゃがんでー」
「はあ?」
「キャッチャーだよ。キャッチャー。で、ツナ。その辺立ってくんね? 立ってるだけでいいから。うん、そー、その辺。バッターボックス。」
指示を出してから、山本は二人に背を向ける。適当に距離をとって、振り返る。
うん。この辺だな。マウンドがないのは残念だけど、まあぜいたくは言わない。
「うし。んじゃ本気でなげっからな。獄寺エラーすんなよー!」
「ちょ、待て!10代目に当たったらどーすんだ!」
「ははっ。デッドボールなんか出さねーって」
ツナを見ると緊張した面持ちでこっちを見ている。
「本当に、ツナにはぜってー当てねーから」
「……うん。山本が言うんなら、信じるよ。」
ふっとツナは表情を緩めた。対照的に、獄寺の眉間のシワは深くなる。
「つか、隣にオレがいる以上10代目にてめーのヘナチョコ球が当たるわけねんだよ。」
ぶつぶつ呟いて、そしてまた声を張り上げる。
「おい、オレ、マスクもなんもしてねーぞ! どーすんだよ」
「あー……。ワリィ、いざって時は適当に避けてくんね?」
「はあ!?」
「獄寺ならどーにかなんじゃね? それに、ヘナチョコ球なんだろ。」
「…………上等じゃねーか。」
獄寺は腰を落とし、ミットを構える。
プロテクタもなにもないけど、そのグローブだってキャッチャー用じゃないけど、でも、獄寺ならどうにかなるだろう。
山本は目を閉じた。
9回の裏、一点差、2アウト満塁、カウントツースリー。
打たせて捕るなんて不可能。
おまけに、ここで負けたらトーナメント敗退。先輩達は引退。
文句なしの全力投球で、ストライクをとって、終わらせる。
一つ、息を吐く。グローブの中で、ボールを転がして、握りを確かめる。
後は、ただ、投げるだけ。
いつもなら、そのはずだった。なのに、何故か今日は、心が揺らいだ。グリップが決まらない。
関係、ないんじゃないか?
疑念が心を占めた。
カウントも、敗退も、先輩の引退も。
チームメイトのコンディションとか、交代させられた先発投手の気持ちとか。
だってここは屋上で、そこにいんのはツナと獄寺で、
オレがしたいのは
ただ、本気で投げること、それだけ。
ひたりと吸い付くように右手にボールが収まった。
ただ、全力で、投げるだけ。
息を吐く。目を見開く。胸元にボールを構える。ゆっくりと、時が止まっていく。両手を高く掲げて、ワインドアップ。もう、キャッチャーミットしか見えていない。心から、言葉が消えていく。腕を降ろす。足を掲げる。肩を開く。踏み込む。腕がしなり、風を切る。そして、リリース…………
『そんで、そのあとは?』
唐突に、言葉が帰って来た。
『そのあとは?』
『今ここで全力で投げて、その後は?』
『二人はチームメイトじゃない』
『ふたりとは野球はできない』
『オレは二度と本気じゃ投げられない』
『今ここで本気で投げて、でも、次なんてない』
キィーンと頭を揺さぶるような音がした。
頭の中からした、と、山本は思った。が、
ィーンコォーンカァーンコォーン
間の抜けた音が続いて、予鈴だ、とツナが呟く。
リリースし損ねたボールが指に引っ掛かってコロンと落ちる。どころか、集中の途切れた山本は、おもいっきり態勢を崩して前につんのめった。
「ちょ、山本!? 大丈夫?」
「なにやってんだ、おまえ」
「いや、ちょっと……びっくりして」
……かっこわりー…………
地面に転がったボールに手を伸ばして、山本はそのまま立ち上がれない。
生まれて初めてだ。投球の途中でこけるなんて。しかも、全力投球の途中で。おまけに、今日は誕生日。
ちょっと軽く死にたい気分だった。ともかく今年一年は幸先悪い気がする。立ち直れない。
「山本、本当に大丈夫?まさか足くじいた?」
「あ、いや、」
ツナに駆け寄られてやっと、慌てて山本は立ち上がる。
「平気。なんともねーよ。」
「そか、ならよかった。遊びで怪我しちゃ元も子もないもんね。」
『遊び』
山本はツナの言葉を繰り返す。
さっきの感覚と、部活の試合と、どっちが『遊び』だろう。
「どーしようか。まだちょっと時間あるけど、さっきの仕切り直す?」
「いや、やめとく。教室戻ろうぜ」
もう一度、投げようという気にはなれなかった。
「てことはオレの不戦勝だな!」
「……あの、獄寺君、だからキャッチボールっていうのはさ……」
「はは、まぁいーんじゃね? そーだな、寿司でもおごろうか。多分今日なら親父も出してくれんじゃねーかな。獄寺、それでいいか?」
「……寿司か……」
獄寺は悩むそぶりを見せた。
「ツナも来るだろ?」
「いーの? なんかいっつもご馳走になってばっかだよ?」
「気にすんなって。その手の怪我の分。親父も、オレが友達つれてくと喜ぶしな。
で、獄寺は?」
「10代目が行くんなら、行く。」
「よし。じゃあ決まりな。」
山本はそこで一呼吸おいた。くるっと獄寺に向き直る。
「そんかわり、ツナの右腕は保留な。」
「ああ!?」
獄寺は一段高い声を上げる。
「てめーのは『ごっこ』だろーが!」
うん。マフィアごっこだ。
でも、『ごっこ』とか『遊び』とか『本気』とか、そんなのは誰が決めるんだろう。
「でも獄寺だってさぁ……」
『本気』なものがひとつだけあって、それ以外は全部『遊び』なんて、そんな簡単なものじゃないと思うんだ。
「さっきマジだっただろ。野球ごっこ。」
「あ、あれは……!」
獄寺は、顔を紅潮させて口ごもってしまった。
ほらオレたちには、まだわからないんだ。
本気と遊びの違いなんて、14になったばかりの、オレには、まだ。
.08.07.23/初出.08.04.25
いい加減、ビアンキも理解してくれたらいいと思う。
「ハヤト! どうしたの!?」
「ふげゃっ!」
抱き上げられた獄寺君は、姉の顔を見るなりまたへんな悲鳴をあげてぐでんと転がってしまった。
「ハヤト! しっかりなさい!」
いや、だから原因はビアンキなんだってば。どうして理解してくれないんだろう。
二人を引き離して、獄寺君はソファに、ビアンキはダイニングに。そのまま台所行って濡れタオル作って獄寺君のところに引き返しておでこにタオル。
「ひゅみまふぇん10代目、ごメーワクを、れも次こそは、」
「あー、うん。また今度ね、次こそはね、でも今はまだろれつ回ってないから大人しく寝てようね」
「ひゃい」
安静第一を釘刺して、やれやれってダイニングに戻ったら原因の狙撃犯ビアンキはリボーンと二人で優雅にお茶していた。当然オレの分のカップなんて出てこない。オレはなんにもない席に座って頬杖をつく。
(つか、あれ? コーヒー?
ビアンキがいれられる訳無いじゃん。
じゃ、リボーンがいれたのか。ビアンキの分も。
うわ、こいつ、ほんっと女には甘いな。
ってか、なのになんで後始末してきたオレには何にもナシ!?)
じとっと黒い帽子を睨んだら、リボーンは突如顔を上げた。黒いつぶらな瞳が二つ。
(ひぃっ!いや、リボーン様のなさることに文句なんかありませんけど!!けど……けどやっぱでも、むー……)
「……ビアンキもさ、獄寺君が倒れるのわかってるんだから、突然素顔で現れるの、やめたほうがいいと思うんだけど……」
「ツナ、」
ビアンキはゆっくりとカップを置きオレを見る。
「年上の異性の気を引くためとしても、そのやり方は幼稚過ぎるわ。」
「ちがーうっっ!」
ほんとどうしてそーなるんだ!
「ぜんっぜんチガウってか何その無駄な自信! なんでオレがビアンキに!?」
「まあ、照れちゃって」
「照れてなーいっ!」
「でもごめんなさいね、私にはリボーンしか見えないの」
「だそーだ。悪いな、ツナ。モテるオトコはツライゼ」
「赤ん坊のお前に言われたくない! ってか何ちゃっかり交じってアピールしてんの? 自慢かよ!?」
「まあ、冗談はともかく、」
「冗談だったのかよ!」
「私は顔を隠すつもりなんてないわ」
「……なんで?」
長い爪がカップを弾いた。
「なんで?」
ビアンキが繰り返した。
「次も失敗するなんて、どうしてあなたに言い切れるの?」
ああ、どうしようもない姉弟に、オレは捕まってしまった。
毎日毎日次こそはを繰り返して、
いつかくる「その日」を信じてみつめてる。
「あらリボーン、カップが空ね。おかわりはいかが? 今度は私が入れるわ。」
「悪ィな。でも、気持ちだけで十分だぞ。入れるんだったら、看病して帰って来たツナに入れてやってくれ。」
「そうね、じゃあ、隼人の分のお礼も込めて……」
「いっ! いらないよー!!」
「まあ、失礼ね。これでも日々研究を重ねて……」
「それで、味じゃなくて殺傷度が上がってるんだろー!!」
オレには「その日」は全然見えないけど、
多分明日も、「その日」じゃない明日がくるんだろう、けど。
明日も明日もそのまた明日もずーっと明日ばっかり続きそうだから、
じゃあやっぱりそのうち、明日の中にその日がひょっこり顔をだすのかもしれない。
「私のコーヒーがのめないの!?」
「あ、ああオレ! 獄寺君のタオル代えてくるっ!」
「待ちなさい、ツナ!」
「ちょ、着いてくるなってー!」
………でもやっぱ、明日も来ないよなぁ。
「ハヤト! どうしたの!?」
「ふげゃっ!」
抱き上げられた獄寺君は、姉の顔を見るなりまたへんな悲鳴をあげてぐでんと転がってしまった。
「ハヤト! しっかりなさい!」
いや、だから原因はビアンキなんだってば。どうして理解してくれないんだろう。
二人を引き離して、獄寺君はソファに、ビアンキはダイニングに。そのまま台所行って濡れタオル作って獄寺君のところに引き返しておでこにタオル。
「ひゅみまふぇん10代目、ごメーワクを、れも次こそは、」
「あー、うん。また今度ね、次こそはね、でも今はまだろれつ回ってないから大人しく寝てようね」
「ひゃい」
安静第一を釘刺して、やれやれってダイニングに戻ったら原因の狙撃犯ビアンキはリボーンと二人で優雅にお茶していた。当然オレの分のカップなんて出てこない。オレはなんにもない席に座って頬杖をつく。
(つか、あれ? コーヒー?
ビアンキがいれられる訳無いじゃん。
じゃ、リボーンがいれたのか。ビアンキの分も。
うわ、こいつ、ほんっと女には甘いな。
ってか、なのになんで後始末してきたオレには何にもナシ!?)
じとっと黒い帽子を睨んだら、リボーンは突如顔を上げた。黒いつぶらな瞳が二つ。
(ひぃっ!いや、リボーン様のなさることに文句なんかありませんけど!!けど……けどやっぱでも、むー……)
「……ビアンキもさ、獄寺君が倒れるのわかってるんだから、突然素顔で現れるの、やめたほうがいいと思うんだけど……」
「ツナ、」
ビアンキはゆっくりとカップを置きオレを見る。
「年上の異性の気を引くためとしても、そのやり方は幼稚過ぎるわ。」
「ちがーうっっ!」
ほんとどうしてそーなるんだ!
「ぜんっぜんチガウってか何その無駄な自信! なんでオレがビアンキに!?」
「まあ、照れちゃって」
「照れてなーいっ!」
「でもごめんなさいね、私にはリボーンしか見えないの」
「だそーだ。悪いな、ツナ。モテるオトコはツライゼ」
「赤ん坊のお前に言われたくない! ってか何ちゃっかり交じってアピールしてんの? 自慢かよ!?」
「まあ、冗談はともかく、」
「冗談だったのかよ!」
「私は顔を隠すつもりなんてないわ」
「……なんで?」
長い爪がカップを弾いた。
「なんで?」
ビアンキが繰り返した。
「次も失敗するなんて、どうしてあなたに言い切れるの?」
ああ、どうしようもない姉弟に、オレは捕まってしまった。
毎日毎日次こそはを繰り返して、
いつかくる「その日」を信じてみつめてる。
「あらリボーン、カップが空ね。おかわりはいかが? 今度は私が入れるわ。」
「悪ィな。でも、気持ちだけで十分だぞ。入れるんだったら、看病して帰って来たツナに入れてやってくれ。」
「そうね、じゃあ、隼人の分のお礼も込めて……」
「いっ! いらないよー!!」
「まあ、失礼ね。これでも日々研究を重ねて……」
「それで、味じゃなくて殺傷度が上がってるんだろー!!」
オレには「その日」は全然見えないけど、
多分明日も、「その日」じゃない明日がくるんだろう、けど。
明日も明日もそのまた明日もずーっと明日ばっかり続きそうだから、
じゃあやっぱりそのうち、明日の中にその日がひょっこり顔をだすのかもしれない。
「私のコーヒーがのめないの!?」
「あ、ああオレ! 獄寺君のタオル代えてくるっ!」
「待ちなさい、ツナ!」
「ちょ、着いてくるなってー!」
………でもやっぱ、明日も来ないよなぁ。
「今日、獄寺休みなのな。」
なんか聞いてる?
と、昼休み山本がいう。
さっきチャイムがなって、4限の授業が終わったばかり。獄寺は遅刻こそ多いが、それだって昼までには登校してくる。ツナと一緒に昼食をとるためだろう。その昼食の時間に姿を見せないということは、今日はきっともうこない。
「たぶん、仕事だと思うよ」
屋上行く?
弁当を片手にツナは立ち上がる。
んー。
曖昧な返事を受けツナは山本に先んじて教室を出る。
「仕事って?」
「あー。えと、バイト?」
ふーん。
「どんな?」
どんな、だろう。学校にいない獄寺。マフィアの獄寺。
「……わかんないや」
「ツナ、聞いてねーの?」
「うん」
へえ。
獄寺のことだから、なんでもツナに報告しているのだろうと思っていた。
というか、ツナは獄寺のことはなんでも知っているのだろうと思っていた。
「ツナにも、知らないことあるのな」
「そりゃあるよ。てゆーか、ほとんど知らないよ。」
あんなにいっつも、一緒にいるのに?
獄寺はあんなにいっつもツナを呼んでいるのに?
いっつも呼ばれて振り返るのに?
「知りたくねーの?」
「んー? あんまり。」
「? なんで?」
「えー、なんでって……」
屋上のドアを開けて、空を仰ぐ。
「全部聞いちゃったら、獄寺君、オレのことばっかりになっちゃうから、だから、聞かないんだ。」
なんか聞いてる?
と、昼休み山本がいう。
さっきチャイムがなって、4限の授業が終わったばかり。獄寺は遅刻こそ多いが、それだって昼までには登校してくる。ツナと一緒に昼食をとるためだろう。その昼食の時間に姿を見せないということは、今日はきっともうこない。
「たぶん、仕事だと思うよ」
屋上行く?
弁当を片手にツナは立ち上がる。
んー。
曖昧な返事を受けツナは山本に先んじて教室を出る。
「仕事って?」
「あー。えと、バイト?」
ふーん。
「どんな?」
どんな、だろう。学校にいない獄寺。マフィアの獄寺。
「……わかんないや」
「ツナ、聞いてねーの?」
「うん」
へえ。
獄寺のことだから、なんでもツナに報告しているのだろうと思っていた。
というか、ツナは獄寺のことはなんでも知っているのだろうと思っていた。
「ツナにも、知らないことあるのな」
「そりゃあるよ。てゆーか、ほとんど知らないよ。」
あんなにいっつも、一緒にいるのに?
獄寺はあんなにいっつもツナを呼んでいるのに?
いっつも呼ばれて振り返るのに?
「知りたくねーの?」
「んー? あんまり。」
「? なんで?」
「えー、なんでって……」
屋上のドアを開けて、空を仰ぐ。
「全部聞いちゃったら、獄寺君、オレのことばっかりになっちゃうから、だから、聞かないんだ。」